この恋、遊びにつき。

想い出。

写真、か。

keiさんの顔は私もみたことないけど、
顔を隠した全身写真なら出会って最初のころに見た。

バスケットをやってるだけあって、スラっとした感じ。
多分顔もかっこいいんじゃないかな?

だけど私は。。
スタイルはいいって言われても、顔は普通。
声だけでkeiさんはきっと私の顔を想像してて。
それで気に入ってくれてるんだと思う。
だから写真を見せて、彼のイメージが崩れるのが怖い。

せっかく上手くいきかけてるのに…。




「いらっしゃいませ」

りえさんの声が聞こえて、我に返る。


「カウンターでもいいですか?」

聞きなれた声は、悠さんのものだった。
りえさんが私がいるカウンターに彼を通す。



出来れば隠れてしまいたかった。
この前あんな風に噛みついてしまったから。
会いたく、なかった。


「こんにちは」

「…いらっしゃいませ」

やだ、少し顔がひきつる。
でも、少し胸が高鳴る。



「コーヒーもらえるかな」

「かしこまりました」



りえさんがBMGを変えた。
北欧テイストの温かい雰囲気のアルバム。
コーヒーの香りもあって、気持ちが落ち着いてくる。



「お待たせしました」

「ありがとう」


「あ、あの…この前はすみません」

「この前?…ああ、あれね」

「知り合いに似てただけなんです、ほんとに」

「どんな人なの?その知り合い」

「そんな悠さんにお話するような人じゃないです」

「聞きたいから聞いてるんだよ」


悠さんがコーヒーを飲みながら、笑顔で私を見つめる。
その目を見ていると、吸い込まれそうで泣きそうになった。
悠さんは結城先生じゃないのに、
またこんな目をして私を見つめてくれるのがたまらなく嬉しかった。


今先生にあったって、きっと先生は笑ってくれる。
私がその目を見つめ返せないだけなんだけど。


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