恋人同盟〜モテる二人のこじらせ恋愛事情〜
誕生日プレゼント
「めぐ、今度の『辻褄合わせの会』はお前の誕生日にしようぜ」
めぐの誕生日の5月16日が3日後に迫ると、弦がそう提案してきた。
「いいけど。どこで?私の部屋?」
「せっかく誕生日なんだから、めぐの好きな所に行こう。どっかないのか?行ってみたいレストランとか」
「うーん、特にないなあ。いいお店とか全然知らないし」
「そっか。じゃあ俺が決めてもいいか?予定だけ空けといてくれ」
「うん、分かった。ありがとう」
そして誕生日当日。
めぐは仕事を終えると弦と一緒に事務所をあとにした。
「今日さ、車で来てるんだ。回してくるからパークのエントランスで待ってて」
そういって弦はタタッとパーキングに向かう。
(わざわざ車出してくれるなんて、申し訳ないな。氷室くんの誕生日はお返しに私もお祝いしよう。確か8月だったよね。あ、それまでに氷室くんに彼女が出来てるかも)
そんなことを思いながら、めぐは一人パークのエントランスエリアに佇む。
行き交うカップル達の幸せそうな様子に目を細めていると、いきなり後ろから声をかけられた。
「かーのじょ!こんなところに一人でいたら危ないよ。俺と一緒に行こうぜ」
途端にめぐはため息をつく。
せっかくゲストの楽しそうな笑顔にほのぼのとしていたのに、一気に気持ちが冷めてしまった。
「ねえねえ、そんなしょんぼりしてないでさ。楽しもうよ」
そう言って強引に肩を抱いてくる男の手を払い、めぐは振り返ってきっぱりと言う。
「やめてください。迷惑です」
「おお、めちゃくちゃ美人じゃん。まれに見る上玉!ラッキー」
下品な物言いに、めぐは露骨に眉間にしわを寄せた。
「人を待ってるので」
そう言ってスタスタと歩き出す。
「一人で待たせるようなヤツなんかより、俺の方がいいって。な?行こうぜ」
「しつこいです。本当にやめて」
再び肩を抱こうと腕を伸ばす男に、めぐは身をよじって後ずさる。
その時、パシッと男の手が誰かに振り払われた。
「汚い手でさわんじゃねーよ」
「氷室くん!」
弦はめぐの前に立ちはだかり、男を真上から見下ろす。
「軽く声かけていい相手かどうかも分かんねえの?この身の程知らずが。思い知らされたくなかったらさっさと失せろ」
身長差20センチ近くの相手に凄まれ、男はヒッと肩をすくめてそそくさと立ち去った。
「ごめんね、氷室くん。ありがとう」
「いや、俺が悪い。めぐをこんなところで一人にさせるなんて、こうなるのは目に見えてたのに。ごめんな」
「ううん、助かった」
「早く行こう、乗って」
「ありがとう」
めぐは弦が開けたドアから、流れるように美しいボディラインの車に乗り込む。
外側はネイビーメタリック、内装はブラックレザーでシックな雰囲気だ。
「うわー、かっこいいね!この車」
「あれ?めぐ、乗ったことなかったっけ?」
「ないよ。見かけたことはあるけど、乗せてもらうのは初めて。なんかいい香りするね。氷室くんの匂いだ。ちょっとウッディーで爽やかな感じ」
「そうか?自分だと分からん。俺、別に香水つけてないけど。芳香剤かな?」
「そっか、車の匂いだったんだね。はあー、なんか落ち着く」
めぐは目をつぶって深呼吸する。
弦はゆっくりと車を発進させた。
「走りも静かだね、気持ちいい……。よく眠れそう」
「ははは!なんだよ、それ。まあ、寝ててもいいけどさ。着いたら起こす」
「まさか。ほんとに寝ないよ」
「いいって。30分くらいかかるから寝てろ」
「大丈夫。運転してもらってるのに、寝るなんてことしないから」
そう言いつつ、聴こえてくる静かな音楽と心地良い車の揺れに、めぐはいつの間にかスーッと眠りに落ちていた。
めぐの誕生日の5月16日が3日後に迫ると、弦がそう提案してきた。
「いいけど。どこで?私の部屋?」
「せっかく誕生日なんだから、めぐの好きな所に行こう。どっかないのか?行ってみたいレストランとか」
「うーん、特にないなあ。いいお店とか全然知らないし」
「そっか。じゃあ俺が決めてもいいか?予定だけ空けといてくれ」
「うん、分かった。ありがとう」
そして誕生日当日。
めぐは仕事を終えると弦と一緒に事務所をあとにした。
「今日さ、車で来てるんだ。回してくるからパークのエントランスで待ってて」
そういって弦はタタッとパーキングに向かう。
(わざわざ車出してくれるなんて、申し訳ないな。氷室くんの誕生日はお返しに私もお祝いしよう。確か8月だったよね。あ、それまでに氷室くんに彼女が出来てるかも)
そんなことを思いながら、めぐは一人パークのエントランスエリアに佇む。
行き交うカップル達の幸せそうな様子に目を細めていると、いきなり後ろから声をかけられた。
「かーのじょ!こんなところに一人でいたら危ないよ。俺と一緒に行こうぜ」
途端にめぐはため息をつく。
せっかくゲストの楽しそうな笑顔にほのぼのとしていたのに、一気に気持ちが冷めてしまった。
「ねえねえ、そんなしょんぼりしてないでさ。楽しもうよ」
そう言って強引に肩を抱いてくる男の手を払い、めぐは振り返ってきっぱりと言う。
「やめてください。迷惑です」
「おお、めちゃくちゃ美人じゃん。まれに見る上玉!ラッキー」
下品な物言いに、めぐは露骨に眉間にしわを寄せた。
「人を待ってるので」
そう言ってスタスタと歩き出す。
「一人で待たせるようなヤツなんかより、俺の方がいいって。な?行こうぜ」
「しつこいです。本当にやめて」
再び肩を抱こうと腕を伸ばす男に、めぐは身をよじって後ずさる。
その時、パシッと男の手が誰かに振り払われた。
「汚い手でさわんじゃねーよ」
「氷室くん!」
弦はめぐの前に立ちはだかり、男を真上から見下ろす。
「軽く声かけていい相手かどうかも分かんねえの?この身の程知らずが。思い知らされたくなかったらさっさと失せろ」
身長差20センチ近くの相手に凄まれ、男はヒッと肩をすくめてそそくさと立ち去った。
「ごめんね、氷室くん。ありがとう」
「いや、俺が悪い。めぐをこんなところで一人にさせるなんて、こうなるのは目に見えてたのに。ごめんな」
「ううん、助かった」
「早く行こう、乗って」
「ありがとう」
めぐは弦が開けたドアから、流れるように美しいボディラインの車に乗り込む。
外側はネイビーメタリック、内装はブラックレザーでシックな雰囲気だ。
「うわー、かっこいいね!この車」
「あれ?めぐ、乗ったことなかったっけ?」
「ないよ。見かけたことはあるけど、乗せてもらうのは初めて。なんかいい香りするね。氷室くんの匂いだ。ちょっとウッディーで爽やかな感じ」
「そうか?自分だと分からん。俺、別に香水つけてないけど。芳香剤かな?」
「そっか、車の匂いだったんだね。はあー、なんか落ち着く」
めぐは目をつぶって深呼吸する。
弦はゆっくりと車を発進させた。
「走りも静かだね、気持ちいい……。よく眠れそう」
「ははは!なんだよ、それ。まあ、寝ててもいいけどさ。着いたら起こす」
「まさか。ほんとに寝ないよ」
「いいって。30分くらいかかるから寝てろ」
「大丈夫。運転してもらってるのに、寝るなんてことしないから」
そう言いつつ、聴こえてくる静かな音楽と心地良い車の揺れに、めぐはいつの間にかスーッと眠りに落ちていた。