音楽的秘想(Xmas短編集)
 お前はあの子と過ごした数ヶ月間、凄く幸せだったんだろ?「いつか結婚するかもな」なんて言ってたこと、俺はしっかり覚えてるぞ。お揃いなんだと言って見せられた、彼女お手製の、可愛いマスコット付きの携帯ストラップ。一緒に付けていたギターピックモチーフのそれと比べて、「これが一番良いだろ?」と自慢げだったあの笑顔。その笑顔の源は、紛れもなくあの子だった筈だ。

 だから、要。悲しむだけじゃなくて、感謝して欲しいんだよ。楽しい時間をありがとう、人を愛することを教えてくれてありがとうって。お前にもあの子にも、この先もっと良い出会いがあるって信じて欲しいんだよ。だって俺達、まだ17だぜ?お先真っ暗なんてまっぴらだよ。

 このことが思い出に変わる日は、必ず来るんだ。いつか偶然あの子に会ったとしても、「そういえばあんなこともあったね」って笑える日は必ず来るんだよ。

 お前はさ、何つーか……キラキラした時間の使い方が出来たじゃんか。嬉しいことも悲しいことも何にもない毎日なんてつまんないよ。それって、良いことじゃないのかな?

 楽しいばっかりが青春じゃないのと同じだろ。辛いばっかりが青春じゃない。だから、また笑ってくれよ……
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