音楽的秘想(Xmas短編集)
──序音から、小さな火が勢いを増していき、炎へと変わっていくような旋律。聞き手が一瞬で、私の奏でる世界へ入り込んできたのが分かる。交差する両手はまるで、炎を煽る風のようだ。
呼吸の仕方を忘れる程の眩暈を覚えた。彼は視線で、仕草で、声で、私の酸素を奪う。苦しくて苦しくて堪らないのに……私の胸はなお、彼への思いを加速させる。
あの腕に抱かれたらどんなに良いだろう。あの声で愛を囁かれたらどんなに幸せだろう。そんなことばかり脳裏に浮かぶ。意馬心猿ではしたないと言われようが、この恋情は止められないのだ。
燃え上がっていた炎が、突然水をかけられたようにシュルリと勢いをなくす。だが、実はそうではない。優しい風に撫でられて、ホワホワと安定した、丸くて暖かい燃え方に変わったのだ。それは、彼に頭を撫でられた時の心地好さに似ている。
彼の大きくて穏やかな手は、私を羽の大地に身を預けるような気分にさせる。宙に浮いたままになり、いつか自分を見失ってしまいそうだとさえ思った。
恥ずかしがってクスクス笑うような音に心をくすぐられ、思わず目を閉じる。そうしたらまた……轟音を立てる炎が、私を熱くする。
呼吸の仕方を忘れる程の眩暈を覚えた。彼は視線で、仕草で、声で、私の酸素を奪う。苦しくて苦しくて堪らないのに……私の胸はなお、彼への思いを加速させる。
あの腕に抱かれたらどんなに良いだろう。あの声で愛を囁かれたらどんなに幸せだろう。そんなことばかり脳裏に浮かぶ。意馬心猿ではしたないと言われようが、この恋情は止められないのだ。
燃え上がっていた炎が、突然水をかけられたようにシュルリと勢いをなくす。だが、実はそうではない。優しい風に撫でられて、ホワホワと安定した、丸くて暖かい燃え方に変わったのだ。それは、彼に頭を撫でられた時の心地好さに似ている。
彼の大きくて穏やかな手は、私を羽の大地に身を預けるような気分にさせる。宙に浮いたままになり、いつか自分を見失ってしまいそうだとさえ思った。
恥ずかしがってクスクス笑うような音に心をくすぐられ、思わず目を閉じる。そうしたらまた……轟音を立てる炎が、私を熱くする。