音楽的秘想(Xmas短編集)
僕達が選んだ曲、母さんはどう思うんだろうな。分かんないけど、多分喜ぶだろ。そんな言葉を、目で密やかに交わす。やがて、司会である放送部のアナウンスを合図に、ニ卵性双生児の僕達は並んで歩き始める。
「続きましては、プログラム4番、ボーカル学科2年の紫堂泉海君と瑞希君。曲目は『ミソスープ』です。」
顔かたちには違いがあるけど、仕草はよく似ている二人。同じ歩幅に思わず笑った。
そういえば、母さんも同じことを言ってたっけ。ふと浮かんだ思いに弟を目をやると、彼も僕をジッと見つめていた。
『あんた達、やっぱり仲良しねぇ。歩幅もぴったりおんなじじゃない!』
懐かしい台詞が耳元でした気がして、聞こえる筈のない声を探してしまった。会場を見渡しても、あの姿が見られる訳がないのに。
キョロキョロする僕を見て、瑞希はてっきり不審そうな顔をしているのだと思った。だけど、違ったんだ。何処かとぼけたような──きっとこの僕と全く同じ表情で、こちらに目を向けていた。
高い場所に立つと自分達が場違いに思えてくる。このままじゃいけない。やっぱり言わなくちゃ……そんな気持ちに、心が揺れた。
「続きましては、プログラム4番、ボーカル学科2年の紫堂泉海君と瑞希君。曲目は『ミソスープ』です。」
顔かたちには違いがあるけど、仕草はよく似ている二人。同じ歩幅に思わず笑った。
そういえば、母さんも同じことを言ってたっけ。ふと浮かんだ思いに弟を目をやると、彼も僕をジッと見つめていた。
『あんた達、やっぱり仲良しねぇ。歩幅もぴったりおんなじじゃない!』
懐かしい台詞が耳元でした気がして、聞こえる筈のない声を探してしまった。会場を見渡しても、あの姿が見られる訳がないのに。
キョロキョロする僕を見て、瑞希はてっきり不審そうな顔をしているのだと思った。だけど、違ったんだ。何処かとぼけたような──きっとこの僕と全く同じ表情で、こちらに目を向けていた。
高い場所に立つと自分達が場違いに思えてくる。このままじゃいけない。やっぱり言わなくちゃ……そんな気持ちに、心が揺れた。