音楽的秘想(Xmas短編集)
揃って腰を折れば、風に追いかけられている枯れ葉の足音のような拍手。目前のスタンドにセットされてあるマイクを手に口を開けようとする僕を遮ったのは、他の誰でもない、弟の声だった。
「……歌う前に、皆さんに断っておきたいことがあります。俺達兄弟は今日、この歌を一人の女の人に捧げるために、ここに立っています。
その人は、俺達の母親です。丁度一年前の今日、癌で亡くなりました。」
双子の神秘を改めて目の当たりにする。言葉は少し違うけど、僕が言おうとしていたのと全く同じ気持ちを、瑞希はお客さんに伝えている。あぁ、僕達はやっぱり双子だ。瑞希が僕をチラリと見る。分かったよ、ここからは兄ちゃんが喋ってやるよ。
「……これから歌うのは母が好きな曲でもあり、僕達が好きでもある曲です。
一人のために歌うのは、あまりにも場違いだって分かってます。でも僕達は、いつまでも母を縛り付けたくないんです。区切りを付けたいんです。
歌わせてもらうからには最高のハモりを届けます。だから、どうか終わりまで聴いてやって下さい。」
ざわめきをなくした四角い空間で視線が交わる。お互いのタイミングを読み、僕達は吸気を揃えた。
「……歌う前に、皆さんに断っておきたいことがあります。俺達兄弟は今日、この歌を一人の女の人に捧げるために、ここに立っています。
その人は、俺達の母親です。丁度一年前の今日、癌で亡くなりました。」
双子の神秘を改めて目の当たりにする。言葉は少し違うけど、僕が言おうとしていたのと全く同じ気持ちを、瑞希はお客さんに伝えている。あぁ、僕達はやっぱり双子だ。瑞希が僕をチラリと見る。分かったよ、ここからは兄ちゃんが喋ってやるよ。
「……これから歌うのは母が好きな曲でもあり、僕達が好きでもある曲です。
一人のために歌うのは、あまりにも場違いだって分かってます。でも僕達は、いつまでも母を縛り付けたくないんです。区切りを付けたいんです。
歌わせてもらうからには最高のハモりを届けます。だから、どうか終わりまで聴いてやって下さい。」
ざわめきをなくした四角い空間で視線が交わる。お互いのタイミングを読み、僕達は吸気を揃えた。