音楽的秘想(Xmas短編集)
「皆さん、お待たせ致しました。本日のトリを飾るのは、プログラム5番、ボーカル学科3年の吉原麗紗さんと、ピアノ学科3年の多賀谷優乃さん。曲目は『歌うたいのバラッド』です。」
名前を呼ばれ、スクッと立ち上がる。パイプ椅子のヒヤリとした部分にふくらはぎが触れ、心臓が少しだけ飛び跳ねた。歩いていく赤い道の途中。通路側に座っているあいつが「頑張れよ」と声をかけてきた。あたしは立ち止まり、ゆっくりとそちらを向く。
「……あたしが今から歌う曲、覚えてる?」
「あぁ。親睦会で俺がお前らに歌った曲だろ?」
「うん。あのね、あたし器用な人間じゃないからさ……ちゃんと聴いててね、友宏。」
え、と呟くあいつを残し、相方が待つ場所へ向かう。優乃が階段脇で小さく手を振り、そのまま拳を握る。あたしも同じように、軽く手を握り締めた。舞台中央に立つあたしと、ピアノの前に立つ優乃。お辞儀をすれば、拍手の音と沢山の視線。いよいよ緊張してきた。いや、心地よいプレッシャーだ。
チラリと振り返り、椅子に腰かけた相方と目で言葉を交わす。頷き合えば、ピアノ伴奏が始まる。あたしはスタンドごと、マイクをギュッと握り締めた。
名前を呼ばれ、スクッと立ち上がる。パイプ椅子のヒヤリとした部分にふくらはぎが触れ、心臓が少しだけ飛び跳ねた。歩いていく赤い道の途中。通路側に座っているあいつが「頑張れよ」と声をかけてきた。あたしは立ち止まり、ゆっくりとそちらを向く。
「……あたしが今から歌う曲、覚えてる?」
「あぁ。親睦会で俺がお前らに歌った曲だろ?」
「うん。あのね、あたし器用な人間じゃないからさ……ちゃんと聴いててね、友宏。」
え、と呟くあいつを残し、相方が待つ場所へ向かう。優乃が階段脇で小さく手を振り、そのまま拳を握る。あたしも同じように、軽く手を握り締めた。舞台中央に立つあたしと、ピアノの前に立つ優乃。お辞儀をすれば、拍手の音と沢山の視線。いよいよ緊張してきた。いや、心地よいプレッシャーだ。
チラリと振り返り、椅子に腰かけた相方と目で言葉を交わす。頷き合えば、ピアノ伴奏が始まる。あたしはスタンドごと、マイクをギュッと握り締めた。