音楽的秘想(Xmas短編集)
 ──去年のクリスマス、僕は街角でケーキを売っていた。まだ、独り身だったのだ。そして、君も。

 僕のバイト先にケーキを買いにきてくれた君。その時君が店長に申し出たのがきっかけで、年が明けると、君は僕のバイト仲間になっていた。

 バイト中は結んでいる髪をほどく瞬間や、ドジをやらかして「すみません……」と言いながら涙目になっている瞳。そのどれもに、僕は惹かれていった。

 君に、隣で笑っていて欲しい。そう思って、僕は君に気持ちを伝えた。笑顔で「ありがとう。よろしくね!」と言ってくれた君を、僕は今でも憶えている。



「春はお花見してー、夏は海水浴行ってー、秋は紅葉見に行ってー……冬は何処行こっか?」

「おいおい、気が早いよ。もっとゆっくり考えな。」



 一緒に何処かに行きたくて仕方ないらしい君。當間(とうま)君、藤原と呼び合っていたのが下の名前に変わってから、君は僕に呼ばれると嬉しそうに笑ってくれた。

 君は会う度に様々な表情を見せてくれるから、隣に居るのはとても楽しい。片時も目を離せない。それくらい、君の笑顔を綺麗だと思った。
< 34 / 40 >

この作品をシェア

pagetop