音楽的秘想(Xmas短編集)
♪だから、笑って?
『俺、彼女と別れたんだ。』
親友の岡林要(おかばやし かなめ)からそう聞かされたのは、一週間とちょっと前のこと。他校の美少女とお熱い仲だって散々ノロケられてきたから、電話越しの悲しそうな言葉を理解するのに時間がかかった。
“何で?”とか“どうして?”と尋ねたら、要は多分答えてくれただろう。だけど、そんな気は全然起きなかった。すっかり意気消沈した要の声を聞きながら「……そうか」と返すことしか、俺には出来なかったんだ。
よりによってクリスマス前に別れるなんて。別れを切り出したのは彼女の方に違いないけど、その子を罵ったところで何にもならない。そんなくだらないことよりも、俺は要の“これから”が心配だ。辛さを乗り越えて歩き始めてくれるだろうか。何度も繰り返す溜め息は減るだろうか。心からの笑顔を取り戻してくれるだろうか。いつもいつも、気がかりだった。
口を開けば、嬉しそうにあの子のことを話してくれた要。俺はそんな要を見ているのが好きだったし、二人には今年のクリスマスも一緒に過ごして欲しかった。だけど……それはもう、叶わないんだ。現実はいつも、俺達人間を冷たく嘲笑うから。
親友の岡林要(おかばやし かなめ)からそう聞かされたのは、一週間とちょっと前のこと。他校の美少女とお熱い仲だって散々ノロケられてきたから、電話越しの悲しそうな言葉を理解するのに時間がかかった。
“何で?”とか“どうして?”と尋ねたら、要は多分答えてくれただろう。だけど、そんな気は全然起きなかった。すっかり意気消沈した要の声を聞きながら「……そうか」と返すことしか、俺には出来なかったんだ。
よりによってクリスマス前に別れるなんて。別れを切り出したのは彼女の方に違いないけど、その子を罵ったところで何にもならない。そんなくだらないことよりも、俺は要の“これから”が心配だ。辛さを乗り越えて歩き始めてくれるだろうか。何度も繰り返す溜め息は減るだろうか。心からの笑顔を取り戻してくれるだろうか。いつもいつも、気がかりだった。
口を開けば、嬉しそうにあの子のことを話してくれた要。俺はそんな要を見ているのが好きだったし、二人には今年のクリスマスも一緒に過ごして欲しかった。だけど……それはもう、叶わないんだ。現実はいつも、俺達人間を冷たく嘲笑うから。