おおかみは羊の皮を被らない

想いをかみしめて(side:美彩)

(side:美彩)


久々の呼び出しに、やる気満々で勇んで行く。

前に口元を怪我し、その時に取り囲んでいた数名は学校から処分を受け、その家族は学園都市から重い罰を受けたらしい。
それが表に出ることはなかったけれど、風の噂は広がり少しの平穏が訪れた。

多分、今までなかった動き。
それは今、遠矢の環境に由来するのか。私には告げられていない。


向かった先に居たのは、見知らぬ男子生徒。

私なんかに告白する人が、まだいたんだ。
しかも遠矢と付き合っているのに……

「周りの女の子に、ひどい事をされてまで付き合うの?」

私の味方みたいに言うけれど。
きっと周りが落ち着いたからだろうな。

「私の選択よ。」

「見ていられない!あいつは、見て見ぬふりじゃないか!」

「ふっ……」

笑みが、こぼれてしまう。

「何がおかしいの?」

「あなたには分からない。あなたは私を知らない。試練は、私のもの。私の……だから遠矢でも、手を出したら赦さない。」

「あいつの呪いのせいだろ?そんな冷たい奴……」

「ごめんね。彼への愛しさに、胸がいっぱいになる……彼の子を願うの。」

私の返事に、理解できない……そんな表情で去って行く。
そうね、呪いとそれに付随する諸々……


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