おおかみは羊の皮を被らない

甘さをかみしめて(side:遠矢)

(side:遠矢)


美彩の匂いを辿って、歩く。
いつもと違う甘さ。……誘うような香り……興奮する。

美彩の今までにない感情が、そんな匂いになっているのか?
まさか俺以外の誰かに……?

見つけた美彩は、墨に回し蹴り。
離れた場所から、パンツが見えた。

何とも言えない……
燃えるような妬み。憎しみに近い感情が、墨へと向けられる。

「回し蹴り?ちょ、その身長で……やめなさい!パンツが見えたら、俺が遠矢に……」

今更、そんなことを言うんだ。
墨め、美彩とイチャイチャしやがって……

「ふふっ……見たの?見たのなら、記憶を消すか……くくっ……死んじゃう?」

俺の殺気にも気づかないで、仲良しか?

「ぎゃぁ!見てない!!そんな余裕は……あ、遠矢。パス!!」

墨は思い出したかのように、俺に何かを投げた。

「あぁ!!」

美彩は焦ったように叫ぶ。

「何だ、これ?」

いつも墨が持っている録音機器。
美彩が駆け寄る。

「お願い!何でもするから、それを頂戴!!」

必死の美彩……
これを奪い合っていたのか。

て、ことは……


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