おおかみは羊の皮を被らない

反抗期:保志(side:美彩)

(side:美彩)

円華は女の子だからかな?イヤイヤ期はあったけれど、楽だったと思う。
保志が産まれた時には、嬉しそうに世話をしていた記憶しかない。

保志は、采景に意地悪をする。

「ダメよ!まだ采景は食べられないのよ?」

おやつのホットケーキの切れ端を、采景の口に押し付けていたのを発見し、慌てて止めた。

「どして?おいしいって!もっとあげる!」

今回は、お兄ちゃんとしての優しさか。
美味しいものを分けてあげたいなんて、保志も成長してるんだな。

「保志、あのね?采景は、まだ食べられないのよ。だから食事の時は、采景はいつも飲んでいるだけでしょう?」

「ミルク!」

きちんと教えれば分かってくれる。
保志の頭を撫で、安心したのも束の間。

「じゃ、ぼくも!」

私の胸に飛び込んで、抱き着いてきた。
赤ちゃん返りだろうか。

半ばあきらめた私から、保志の体が浮いてビックリする。
遠矢が保志の両脇に手を入れて、回収したのだと理解した。

「ほ~ら、お前の好きな高い高いだぞ~。」

勢いよく振り上げ、天井近くまで掲げ。
これは、前にも見た光景。

「……うっ……ぎゃぴぃ~~~~!!」

遠矢は嫌がる保志を平然と片手で抱き、真剣な目で諭す。

「美彩の胸は俺のだぞ。」

……この男たちはぁ~~。
本当に成長しないんだから!

「いい加減にしなさい!!」


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