おおかみは羊の皮を被らない

反抗期:采景(side:美彩)

(side:美彩)

采景が我儘を始めた。

「や!ピンク、キライ!!」

最近、采景が嫌いだと言っているのに、お父さんが送ってくる服はすべてピンク色。
しかも着たところを写真で見たいと駄々をこねる父。

当然、送られてきた服を見せた途端に、采景はどこで覚えたのか大暴れ。
同じ色にあきたのか、かわいいと言われるのが嫌なのか、まだ原因もはっきりしない。

最初のころは好きな色だったし、むしろ好んで着ていたのに。
写真もポーズを決めてノリノリだったし。

イヤイヤ期ではあるのだけど。
円華とも保志とも違う、采景の強烈さ。

子育ては全て同じではない。
父の我儘に似ているような。


そんな苦悩中の私の傍には、遠矢と保志がいるんだけど。

「嫌だ!俺は美彩と寝る!!」
「おかあさん、ぼくのこときらいなの?」

明らかに、この二人の影響だ。

「保志、美彩は俺の事が好きなんだ!」

子どもと張り合って、遠矢は何を言ってるんだろう。

私は落ち着いた采景を抱き寄せ、柔らかい頬をムニムニ。
采景はご機嫌で笑ってる。


「おかあさんから、きいたことないよ?」

「恥ずかしくって言えないだけだ!俺の前では……あれ?最近、聞いてない?」

何だか面倒な会話をしているぞ。


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