おおかみは羊の皮を被らない
呪いの元凶
別れ際の美彩の表情は、俺に連動するかのような、不安と悲しみの伴うものだった。
寮に独り。
静かな部屋。
「遠矢、大丈夫か?」
余程、今の俺は情けない姿なのだろう。
「墨……教えてくれ。それは俺が知るべきことだろう?情報料がいくらでも出す。願うなら、俺のすべてを犠牲にしても……」
【ぺしっ】
頭に軽い衝撃。
「ばぁ~~か!ガキが、大人みたいなことを言ってんじゃねえ。可愛くない!」
視線を向けると、すねたような顔の墨。
「……墨……」
「いいか、誓え!俺の主なら。呪いを乗り越えると。」
「はっ……はは。」
あまりに偉そうなのを無理してるのが分かって、笑いがこぼれてしまう。
「ふっ……笑ってろ!俺の主は、堂々としてるのがいいんだ。俺の価値が下がるだろ?」
「くっ。下がる評価もないくせに?」
「最近は、あるんだよ!で、誓うのか?」
「……あぁ、誓う。乗り越えるためには情報が必要だろ?」
墨のおかげで、俺は少し気力が戻ったようだ。
「雑種を調べたよな。」
「あぁ、今まで墨や情報屋が会話に触れながら、はぐらかす様な態度だったから。聞いても答えると思えないし、あえて深堀せず。自分のルートで。しかし隠されたかのように手に入らない。」