おおかみは羊の皮を被らない

彼氏彼女(side:遠矢)

(side:遠矢)


美彩から、來名の存在が消えた。
いとこであり、身近にいた友達……君の中で、それは確実な違和感。

『サミシイ』と言わない君の強さ、胸が痛む……
お昼は、美彩の教室で食べるようにした。

俺が現れるまで、美彩は來名と一緒に、ここで食べていたから。

「美彩、美味しい?」

「美味しい!」

「……ふふ。俺の事、好き?」

「嫌い!」

相変わらず、素直じゃない……
そこも可愛くて……

喰いたい。

「なぁあ?何、何なの急に寒気が!!」

美彩は食べる手を止めて、見つめる俺を睨む。

「見ないで!」

口にご飯粒を付けて、顔を逸らす。
机を挟んだ距離が、もどかしい……教室でなければ……

「何よ!むぅ~~」

じっと見つめる俺に頬を膨らませ、不機嫌を示す。

「可愛い……」

自然出た言葉に、美彩は茫然。
手を伸ばし、美彩の口元に付いたご飯粒を指で拭い取り……口に運ぶ。

「なっ!?……恥ずかしいし!!」

顔を真っ赤に……
ご飯粒が付いていたことではなく、俺の言葉や行動が恥ずかしいと言う。

愛しい……狂いそうだ。

「美彩、好きだよ。」

教室なので小さな声。
それに対して、美彩は下を向いた。

表情が見えない。


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