おおかみは羊の皮を被らない

よだれ(side:遠矢)

(side:遠矢)


お昼前に、仕事が早く終わった。
天気がいいから美彩は中庭でお弁当を食べていると、墨から連絡が入る。

見つけた美彩は食べ終わったのか、木にもたれて寝ていた。

可愛い……
顔を見たくて、角度を変えようと頬に触れた。

【ぺちょっ】

……よだれ?ちょっと冷たい。
思わず笑みが漏れてしまう。

起こさないように、頬に触れた手をそのまま保ち。
あいた方の手で、ハンカチを出して拭き取る。

手には、美彩の重みと温もり。

愛しい……
目を閉じて、穏やかに微笑むような寝顔。

少し開いた口に唇を重ね、舌を入れる。
美彩、甘い時間を頂戴……

【ゾクッ】

舌を出したまま、咄嗟に口から離れた。
その瞬間……

【ガチッ】

今、歯の重なる音がした?
……あっぶね。危うく舌を嚙みちぎられていたかもしれない。

起きるのだろうか?
見下ろして様子を観察する。

【もぐもぐ……】

口元を何度か動かして、何かを食べているような仕草。

「美味しいけど、もう食べられないようぅ~~」

可愛い!!
俺の料理を食べている夢でも見ているのかな?

そっと抱き寄せ、美彩の甘い香りと温もりを共に味わう……
幸せな俺の休息の一時…………




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