取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 かたん、と音がして振り返ると母の写真が落ちた。同じく床に落ちていたリモコンに当たり、チャンネルが変わる。
 変わった先の番組からニュースが流れた。飲食店の金庫からお金を盗まれたという。

「犯人は以前この店で働いており……」
 優維はハッとする。

 前に辞めたあの人は?
 彼も神社の鍵を扱うことができた。隙を見て合鍵を作ることも可能だろう。
 いや、千景を信じたいあまりに辞めた人を疑うなんて間違っている。

 とにかく確認しなくては始まらない。
 優維はそっと家を抜け出した。
 懐中電灯を頼りに社務所に入り、辞めた神職の連絡先を探す。

 水上悟志(みなかみさとし)。四十半ばで、市内に住んでいる。
 連絡先をスマホのカメラで撮影し、そっと家に戻る。

 明日になったら電話しよう。
 帰り道を照らす小さな光を、優維はしっかりと見つめていた。
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