取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
エピローグ
 優維は初めての空港に胸を高鳴らせていた。
 天井が高くて広々としていて、人々のざわめきすらも優維の耳に楽しい。

 八月も後半ではあるがロビーには旅行に行くのだろう親子連れがいて、子どもたちが明るい笑顔を見せてはしゃいでいる。
 ふたつのスーツケースを横に、スマホでニュースを見る。

 不動産会社社長、賭博場開帳図利(とり)容疑で再逮捕、と書かれていた。
 聖七はあれ以来、警察の取り調べを受けて逮捕、送検された。
 彼の父はマネーロンダリングに加担していたとして、犯罪収益移転防止法違反で検挙された。
 勇雄は常習賭博罪で捕まり、水上は窃盗と業務上横領で捕まり、違法賭博に興じていたことも発覚し、勇雄ともども検挙・送検された。

「優維、お待たせ」
 千景がペットボトルを手に現れ、ひとつを渡してくれる。
「ありがとう」
 お礼を言って受け取り、蓋を開けて飲む。炭酸がしゅわっと喉を刺激して、優維は思わず目を閉じた。

「一緒にハワイに行けることになって嬉しいよ」
 隣に座り、千景もペットボトルを開ける。
「半分は仕事だけどね」
「残り半分は旅行だ」
 千景が嬉しそうな微笑を浮かべて言う。
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