取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 ふいに千景のスマホが鳴り、彼はスマホを取り出して顔をしかめる。
「すみません、大藤神社からです」
 言って、彼はスマホを手に出て行く。

 だが、ちらりと見えた表示画面には、個人の——しかも女性の名前が表示されていた。
 もやっとしたものが胸に湧いたが、きっと大藤神社の職員の名前なのだろう、と自分を納得させた。

***

 電話を終えた千景は不機嫌にため息をこぼした。
 せっかく根古間神社でうまくやっているのに、邪魔をされてはたまらない。
 千景は電話をかけてきた女性の番号を拒否設定にした。

 根古間神社はまったくもって千景には都合がいい。
 計画は順調に行き過ぎて怖いくらいだ。
 このまま誰にも邪魔はされたくなかった。

***

 翌日は予報通りの快晴だった。
 神社には朝から保護団体『にゃんこのおてて』の人たちが訪れ、テントを設営したりケージを設置したりしている。
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