BaD
ちょうど娘が息子と同じ年ぐらいだった頃、よく家出してなかなか帰らなかった。

息子は相当さっきのことがショックだったのか、家を出たらしい。

さすがにおりてくるのが遅いので気になったのか、妻が息子の部屋まで上がってきた。

部屋をのぞくなり、やっぱりとため息をついた。

「たぶん、お隣のゆう太君の家にいるはずだから呼んできてあげて。」

あきれたようにそういうと、妻はまたリビングへと帰っていった。

雨はとうとう本格的に振り出した。

玄関に妻が用意しておいたのであろう傘を2つ持ち、お隣へ向かった。

だが、息子はそこにはいなかった。

仕方なく家に帰るとドロドロになった小さな靴が玄関に、乱暴に脱ぎ捨てられていた。

靴にはかすれた字で〔そら〕と書かれていた。

「結局自分で帰ってきたのか…。」

独り言を吐きながらリビングに戻ると、冷えた料理が僕を迎えてくれた。

息子は僕が家を出たのと同時に、リビングに駆け上がって料理を食べたのだろう。

妻も完全に息子の味方といったかんじで、そのため料理が冷たくなっても温めてはくれなかった。

だから僕もそれにお答えして、自分で料理を温める事にした。

が、めんどくさくなり、食べずに寝ることにした。

ビールとおつまみを手にし、階段をあがり自分の部屋へ向かった。

隣にある息子の部屋の前まで来たとき、ふと聞き覚えのある声がした。

懐かしいという感覚ではなく、何かゾッとさせるような、そんな声だ。

「……、来て。」

そのときはまだその感覚が何だったのかがわからず、その場を後にした。


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