BaD
翌日、休日で学校が休みだったので、息子も娘もいた。

息子はまだ寝ていたが、娘は朝早くからタンスをしつこく開け閉めしたり、妻の化粧品を取り出したり、鏡の向こうの自分と格闘していた。

僕が何をしているのか尋ねると、少し慌てた様子で返事を返した。

「父さんには関係ないでしょ!…今日も遅くなるから。」

最近娘はよく洒落た服を着て、夜遅くまで遊んで帰ってくる。

遊びたい盛りなのは分かるが、やはり女の子なので心配なものだ。

「できるだけ早く帰るんだぞ、最近日が落ちるのが早いからな。」

こんな注意はほとんど耳には入っていないのだろうが、やはり心配だ。

娘は準備が済むと、あっという間にいなくなっていた。

それとすれ違いに息子がおりてきた。

「おはよう、空。」

やはりまだ機嫌は悪く、目が合ったが、小さくあいさつだけして服を着るとさっさと出て行こうとした。

ご飯は食べないのかと尋ねたが、やはり聞こえないふりをして行ってしまった。

それからあっという間に時間は過ぎ、時計は八時を指していた。

外は真っ暗だというのに、娘も息子もまだ帰ってはこない。

さすがに、心配になった妻は僕に言った。

「いくらなんでも遅くない?空を探してきてよ。」

だが僕は息子の居場所が分からない、そう妻に告げると少しの間何かを考えこんでいたが、少しして覚悟を決めたように頷き言った。

「お父さんには内緒!って言われてたけど仕方ないか。」

そう呟くと、最近空にできた友達の家がおもちゃ屋さんで、そこに遊びに行った事と、その場所を僕に教えてくれた。

内緒にされていたのは少しショックだったが、とりあえず迎えに行くことにし、しぶしぶ教えられた場所を目指して歩き出した。

僕は車の免許を持っていないので、懐中電灯を片手に歩きだす。

そして今更思い出したのだが、今日はまたひと雨くるらしい。

しかも傘を忘れてしまった上、気がつくと見知らぬ所に来てしまった。

これでは自分が迷子になってしまうではないか。

「まずいな、引き返そうかな?」

そう嘆き後を振り向くや否や、息子の声がした。


< 21 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop