無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
エピローグ
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「人事との面談の件で相談があるんですけど、少しいいですか?」

開店前の準備をひととおり終えて、美月はバックヤードのデスクでタブレットを眺めていた岡崎に声をかけた。

「いいよ」

岡崎に促されて、美月は岡崎の向かいに腰を下ろした。

「どうした? 面談って今週末だよな」

「はい。そうなんですが、実は来年以降もこのままこちらで働かせていただきたくて、人事にもそれを伝えるつもりでいます」

ここ半年、碧人と相談しながら出した結論を、美月は迷いのない声で伝えた。

カフェ事業部に籍を置く美月は、出向という形でカフェに赴任している。

事業部自体は本社にあるので、半年に一度本社で面談があり、それが今週末に予定されている。

半年前の十二月は、子どもが小さいということもありリモートで対応してもらえたが、今回は赴任から一年が経っていることもあり、顔を合わせての面談となった。

岡崎は特段驚いた様子も見せず、軽くうなずいた。

「桜井さんがこっちの基地にいるからか?」

「いえ、彼もいずれ別の基地に転属することになるので、それは関係ないんです。あ、でも、関係あるかも」

「ん?」

首をひねる岡崎に美月は言葉を続ける。

「私、学生時代からイギリスで働きたくてそれ以外なにも興味がなかったんです。でもカフェの仕事を知って、海外赴任よりも自分には合っているような気がしたんです」

本当を言えば海外赴任というより本社勤務に対して一時期胃が痛むほど抵抗があったことは、心配をかけるので黙っておくことにした。

「地元の方に必要とされるカフェづくりをまだまだ進めたくて、だからこのままここで働きたいんです」

ここに赴任したばかりの頃は、居場所がなかった本社から逃げ出せただけで十分で、それ以上のことは望んでいなかった。

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