27センチ

入社してしばらくは分からないことだらけだったけれど、

なんとか一通りの流れを把握してきた二週間目。


「おはようございま〜す。」

と店へのトビラを開けると、なにやら店長が洗浄器の前にあぐらをかいて座り込んでいた。

白いシャツの袖を肩まで捲って、右手に工具、左手に洗浄器へとつながるホースを持って。


「何やってるんですか店長?」

うしろからヒョイとのぞきこむと、顔だけ上に向けて「おはよ。」と笑う店長。



なんか、可愛いかもこの人…。


「壊れちゃったんですか?」

「そーなんだよ。なのにオーナーのやつ、金かかるから自分で直せとか言いやがって…!」


ブツブツ言いながらも手は動かす店長は、私には何をやっているのかさっぱり分からなかった。

男の人なんだなぁと、改めて実感した気がする。

華奢なようで以外とガッチリしている腕に、胸が小さく高鳴った。

大胆に床に座り込む後ろ姿にもきゅんとする。



わたし、この人を見るとドキドキする…?


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