いつまでも、夢見せる王子じゃいられない
フェスでのライブステージ
リハーサルを終えた真琴たちは、一旦ステージを降り、水を飲みながら本番の準備をしていた。
会場は、すでに盛り上がりを見せているなか、いよいよ桜影の本番ステージが始まる。
このフェスは今までのライブとは規模も観客の熱気も違う。
それでも、自分たちはここに立つべきバンドだ。
指先の力を抜き、肩を落ち着け、意識を整える。
観客の前に立つときは、"王子様"として最高のパフォーマンスをする。
大きく深呼吸すると、スイッチが入った。表情を引き締め、堂々とした態度を作る。
そして、真琴は軽くスティックを回しながら微笑んだ。
「——よし」
すると、その瞬間だった。
「……そういう顔してるほうが、やっぱり様になるな」
低く落ち着いた声が耳に届く。振り向くと、遼が立っていた。
「そりゃね。俺はステージでは王子様だから」
真琴はいつもの余裕を取り戻し、前髪を軽くかきあげた。
「いい王子様っぷりだ。けど——」
遼はふっと笑い、静かに言った。
「——もっと楽しめよ。"王子様" なら、ファンを夢中にさせるくらいの勢いでな」
——ドキッ。
真琴は一瞬、息を飲んだ。
……遼は、王子様の私も、ちゃんと認めてくれる。
"王子様"は、自分が演じる一つの側面でしかない。でも、それすらも「真琴の一部」として受け入れてくれている。
「……もちろん。俺が本気出したら、みんな釘付けにしちゃうぜ?」
あえて軽い調子で言う。
遼は「それなら期待してる」と短く答えると、そのまま去っていった。
◇◇
ステージの照明が落ち、会場が一瞬静まる。
観客のざわめきが広がる中、照明の落ちたステージからスティックを合わせる軽やかな音が響いた。
——パシッ。
次の瞬間、照明が点灯し、中央に据えたドラムの後ろに立つ真琴の姿が浮かび上がる。
「——待たせたな」
低く響くその声に、観客が一斉にどよめいた。
「桜影、ここに参上!」
真琴は堂々とした笑みを浮かべ、スティックを掲げた。
「今日は最高に楽しんでいけよ!」
——「キャーー!!」
歓声が一斉に沸き起こる。
まさに"王子様"。その立ち姿、仕草、堂々たる佇まいに、観客の目は完全に釘付けだった。
1曲目は、アップテンポのロックナンバー
「1曲目、ぶちかましていくぞ!」
カウントと同時に、早紀のベースと真琴のドラムが疾走感のあるビートを刻む。
そのリズムに乗るように、樹里のギターが勢いよく鳴り響き、詩音のボーカルが一気に観客を引き込む。
観客のボルテージが一気に上がるのを感じながら、真琴は冷静にビートを刻む。
——悪くない。
セットリストの中でも、最も勢いのあるナンバー。
観客は自然と手を上げ、リズムに乗り始める。
大歓声がステージを包み込む。
勢いそのままに、次の曲へ。エモーショナルなロックバラードだ。この曲では、詩音のボーカルの魅力が最大限に発揮される。
詩音の透き通った声が、静かに空間を染めていく。
詩音の歌を、一番いい形で届けよう。真琴は、早紀と息を合わせながら、楽曲の抑揚をしっかりとコントロールする。
観客は静かになり、その音楽に聞き入っていた。
最後は、激しいロックナンバー。
「ラスト、全力でぶっ飛ばしていくぞ!!」
真琴の力強い叫びとともに、最後の楽曲がスタート。
「——キャー!!!」
観客が歓声をあげる。
早紀はどんなに樹里と詩音が暴れても、冷静に正確なリズムを刻み続ける。
それがあるからこそ、樹里はギターソロで存分に暴れ回るし、詩音もアドリブを入れながら最高のボーカルを届ける。
「——っしゃああ!!!」
ここからドラムの見せ場だ。真琴は、スティックを高く掲げ、スネアとバスドラを交互に叩きながら"魅せる"ドラムソロを炸裂させる。激しいスティックさばきに、観客は息を呑む。
「……ヤバい、カッコよすぎる……!」
——そして、最後の一撃。
真琴が全身を使ってスネアを炸裂させると同時に、全楽器がぴたりと止まる。
——静寂。
一瞬の間があった後、観客から大歓声と拍手が巻き起こった。
「ありがとうございました!!」
詩音が叫び、真琴もマイクを取り、堂々と微笑む。
「また会おうぜ!!」
——ライブ終了。
だが、観客の興奮はまだ冷めやらず、拍手と歓声が鳴り止まない。
桜影のステージは、確実にこのフェスの伝説になった。
会場は、すでに盛り上がりを見せているなか、いよいよ桜影の本番ステージが始まる。
このフェスは今までのライブとは規模も観客の熱気も違う。
それでも、自分たちはここに立つべきバンドだ。
指先の力を抜き、肩を落ち着け、意識を整える。
観客の前に立つときは、"王子様"として最高のパフォーマンスをする。
大きく深呼吸すると、スイッチが入った。表情を引き締め、堂々とした態度を作る。
そして、真琴は軽くスティックを回しながら微笑んだ。
「——よし」
すると、その瞬間だった。
「……そういう顔してるほうが、やっぱり様になるな」
低く落ち着いた声が耳に届く。振り向くと、遼が立っていた。
「そりゃね。俺はステージでは王子様だから」
真琴はいつもの余裕を取り戻し、前髪を軽くかきあげた。
「いい王子様っぷりだ。けど——」
遼はふっと笑い、静かに言った。
「——もっと楽しめよ。"王子様" なら、ファンを夢中にさせるくらいの勢いでな」
——ドキッ。
真琴は一瞬、息を飲んだ。
……遼は、王子様の私も、ちゃんと認めてくれる。
"王子様"は、自分が演じる一つの側面でしかない。でも、それすらも「真琴の一部」として受け入れてくれている。
「……もちろん。俺が本気出したら、みんな釘付けにしちゃうぜ?」
あえて軽い調子で言う。
遼は「それなら期待してる」と短く答えると、そのまま去っていった。
◇◇
ステージの照明が落ち、会場が一瞬静まる。
観客のざわめきが広がる中、照明の落ちたステージからスティックを合わせる軽やかな音が響いた。
——パシッ。
次の瞬間、照明が点灯し、中央に据えたドラムの後ろに立つ真琴の姿が浮かび上がる。
「——待たせたな」
低く響くその声に、観客が一斉にどよめいた。
「桜影、ここに参上!」
真琴は堂々とした笑みを浮かべ、スティックを掲げた。
「今日は最高に楽しんでいけよ!」
——「キャーー!!」
歓声が一斉に沸き起こる。
まさに"王子様"。その立ち姿、仕草、堂々たる佇まいに、観客の目は完全に釘付けだった。
1曲目は、アップテンポのロックナンバー
「1曲目、ぶちかましていくぞ!」
カウントと同時に、早紀のベースと真琴のドラムが疾走感のあるビートを刻む。
そのリズムに乗るように、樹里のギターが勢いよく鳴り響き、詩音のボーカルが一気に観客を引き込む。
観客のボルテージが一気に上がるのを感じながら、真琴は冷静にビートを刻む。
——悪くない。
セットリストの中でも、最も勢いのあるナンバー。
観客は自然と手を上げ、リズムに乗り始める。
大歓声がステージを包み込む。
勢いそのままに、次の曲へ。エモーショナルなロックバラードだ。この曲では、詩音のボーカルの魅力が最大限に発揮される。
詩音の透き通った声が、静かに空間を染めていく。
詩音の歌を、一番いい形で届けよう。真琴は、早紀と息を合わせながら、楽曲の抑揚をしっかりとコントロールする。
観客は静かになり、その音楽に聞き入っていた。
最後は、激しいロックナンバー。
「ラスト、全力でぶっ飛ばしていくぞ!!」
真琴の力強い叫びとともに、最後の楽曲がスタート。
「——キャー!!!」
観客が歓声をあげる。
早紀はどんなに樹里と詩音が暴れても、冷静に正確なリズムを刻み続ける。
それがあるからこそ、樹里はギターソロで存分に暴れ回るし、詩音もアドリブを入れながら最高のボーカルを届ける。
「——っしゃああ!!!」
ここからドラムの見せ場だ。真琴は、スティックを高く掲げ、スネアとバスドラを交互に叩きながら"魅せる"ドラムソロを炸裂させる。激しいスティックさばきに、観客は息を呑む。
「……ヤバい、カッコよすぎる……!」
——そして、最後の一撃。
真琴が全身を使ってスネアを炸裂させると同時に、全楽器がぴたりと止まる。
——静寂。
一瞬の間があった後、観客から大歓声と拍手が巻き起こった。
「ありがとうございました!!」
詩音が叫び、真琴もマイクを取り、堂々と微笑む。
「また会おうぜ!!」
——ライブ終了。
だが、観客の興奮はまだ冷めやらず、拍手と歓声が鳴り止まない。
桜影のステージは、確実にこのフェスの伝説になった。