いつまでも、夢見せる王子じゃいられない
将来を語る
Beat Cellarの奥の席。
真琴はコーラを一口飲み、ふと視線を上げた。
「……卒業したら、どうするつもり?」
向かいに座る遼は、グラスを傾けながら、少しだけ目を細める。
「俺?」
「そう。建築の道に進むのは分かってるけど……具体的には?」
「大学院に進むつもりだよ。今の研究をもっと掘り下げたいし、いずれは独立も考えてる」
「そっか」
真琴は少しうなずいた。
「それで、真琴は?」
「……」
答えに詰まる。
「卒業しても、バンドは続けたいって思ってる」
「そうか」
「でも、まだメンバーには話してない」
「どうして?」
「……多分、誰も言い出しにくいんだと思う」
バンドのメンバーは、普段から何でも話せる関係だ。
それでも、“卒業後どうするか” という話題だけは、誰も口にしてこなかった。
「……まだ、結論が出てないから、怖いんだよな」
「怖い?」
「もし、みんなが『進学に専念するからバンドは辞める』って言ったら?」
「……なるほど」
遼は静かにうなずいた。
「真琴は、メンバーがそれぞれの道を選ぶことを尊重してる。でも、本音は、バンドを続けたくて仕方ないってことか」
「……まぁ、そういうこと」
真琴は苦笑しながら、グラスを持ち上げる。
「話した方がいいんだろうな、早めに」
「そうだな」
遼はグラスを置き、静かに微笑んだ。
「でも、真琴だけが悩んでるわけじゃないと思うぞ」
「え?」
「メンバーだって、同じこと考えてるはずだ」
その言葉に、真琴は少し考え込んだ。
……みんなも、同じこと考えてる?そうかもしれない。
けど、それを確かめるのが、まだ怖かった。
◇◇
そのとき、店の入り口でカウベルが鳴った。
「お?」
マスターがカウンターの向こうから声をかける。
「樹里ちゃん、今日はどうした?」
「んー、ちょっと愚痴りに来た」
「親がさ、大学行けってうるさいんよ」
「へぇ……」
マスターはグラスを拭きながら、軽く肩をすくめる。
「でも、そんなこと俺に相談されても何も言えないぞ」
「だから、相談じゃないよ。愚痴りに来たっていったっしょ」
樹里はぼやきながら、カウンターに腰掛ける。
……樹里も進路で悩んでるんだ。
真琴はグラスを持ち上げながら、樹里の言葉に耳を傾ける。
そして——。
「そういや、真琴君、来てるよ。奥の席で遼と話してる」
……マスター!! 余計なこと言わなくても……!
真琴が思ったときには、もう遅かった。
樹里が振り返り、こっちに向かって歩いてくる。
◇◇
「おー、なんだ、お前らデート?」
樹里はニヤリと笑いながら、テーブルに手をついた。
真琴は、これまでなら「違う」と即座に否定していたが、それも無粋だと思い、今日は少しだけ肩をすくめてみせた。
「そう思うなら、そうなんじゃない?」
「ふーん。否定しないんだ。そんで、何話してたん?」
「……バンドのこれからこと」
「バンド?」
「卒業しても、続けたいって思ってる。でも、みんながどう考えてるか分からないから、まだ話せてなかったって話」
樹里は腕を組みながら、少し考え込んだ後、口を開いた。
「まあ、ウチは続ける気だけどな」
「え?」
「でも、ウチの親は大学行けってうるさいしなー。正直、どうすっかは決めかねてる。音楽で食っていけたら、それが一番。でも、そんな甘い世界じゃねぇしな」
「……そうだな」
「でも、ひとつ言えるのは、簡単にやめる気はないってこと」
「……」
「つーか、マコっちゃんが続けたいって言うなら、ウチらもちゃんと考えるっしょ」
真琴は、樹里の言葉に小さく笑った。
……遼の言った通りだった。
「じゃあ、そろそろみんなで話すか」
「お、決心ついた?」
「まぁな」
「よし、じゃあ詩音と早紀にも伝えとく!」
そう言って、樹里はスマホを取り出し、グループチャットを開く。
真琴は、隣でグラスを傾ける遼を見て、そっと礼を言った。
……ありがとう、遼。
遼は軽く微笑みながら、グラスを軽く持ち上げた。
真琴はコーラを一口飲み、ふと視線を上げた。
「……卒業したら、どうするつもり?」
向かいに座る遼は、グラスを傾けながら、少しだけ目を細める。
「俺?」
「そう。建築の道に進むのは分かってるけど……具体的には?」
「大学院に進むつもりだよ。今の研究をもっと掘り下げたいし、いずれは独立も考えてる」
「そっか」
真琴は少しうなずいた。
「それで、真琴は?」
「……」
答えに詰まる。
「卒業しても、バンドは続けたいって思ってる」
「そうか」
「でも、まだメンバーには話してない」
「どうして?」
「……多分、誰も言い出しにくいんだと思う」
バンドのメンバーは、普段から何でも話せる関係だ。
それでも、“卒業後どうするか” という話題だけは、誰も口にしてこなかった。
「……まだ、結論が出てないから、怖いんだよな」
「怖い?」
「もし、みんなが『進学に専念するからバンドは辞める』って言ったら?」
「……なるほど」
遼は静かにうなずいた。
「真琴は、メンバーがそれぞれの道を選ぶことを尊重してる。でも、本音は、バンドを続けたくて仕方ないってことか」
「……まぁ、そういうこと」
真琴は苦笑しながら、グラスを持ち上げる。
「話した方がいいんだろうな、早めに」
「そうだな」
遼はグラスを置き、静かに微笑んだ。
「でも、真琴だけが悩んでるわけじゃないと思うぞ」
「え?」
「メンバーだって、同じこと考えてるはずだ」
その言葉に、真琴は少し考え込んだ。
……みんなも、同じこと考えてる?そうかもしれない。
けど、それを確かめるのが、まだ怖かった。
◇◇
そのとき、店の入り口でカウベルが鳴った。
「お?」
マスターがカウンターの向こうから声をかける。
「樹里ちゃん、今日はどうした?」
「んー、ちょっと愚痴りに来た」
「親がさ、大学行けってうるさいんよ」
「へぇ……」
マスターはグラスを拭きながら、軽く肩をすくめる。
「でも、そんなこと俺に相談されても何も言えないぞ」
「だから、相談じゃないよ。愚痴りに来たっていったっしょ」
樹里はぼやきながら、カウンターに腰掛ける。
……樹里も進路で悩んでるんだ。
真琴はグラスを持ち上げながら、樹里の言葉に耳を傾ける。
そして——。
「そういや、真琴君、来てるよ。奥の席で遼と話してる」
……マスター!! 余計なこと言わなくても……!
真琴が思ったときには、もう遅かった。
樹里が振り返り、こっちに向かって歩いてくる。
◇◇
「おー、なんだ、お前らデート?」
樹里はニヤリと笑いながら、テーブルに手をついた。
真琴は、これまでなら「違う」と即座に否定していたが、それも無粋だと思い、今日は少しだけ肩をすくめてみせた。
「そう思うなら、そうなんじゃない?」
「ふーん。否定しないんだ。そんで、何話してたん?」
「……バンドのこれからこと」
「バンド?」
「卒業しても、続けたいって思ってる。でも、みんながどう考えてるか分からないから、まだ話せてなかったって話」
樹里は腕を組みながら、少し考え込んだ後、口を開いた。
「まあ、ウチは続ける気だけどな」
「え?」
「でも、ウチの親は大学行けってうるさいしなー。正直、どうすっかは決めかねてる。音楽で食っていけたら、それが一番。でも、そんな甘い世界じゃねぇしな」
「……そうだな」
「でも、ひとつ言えるのは、簡単にやめる気はないってこと」
「……」
「つーか、マコっちゃんが続けたいって言うなら、ウチらもちゃんと考えるっしょ」
真琴は、樹里の言葉に小さく笑った。
……遼の言った通りだった。
「じゃあ、そろそろみんなで話すか」
「お、決心ついた?」
「まぁな」
「よし、じゃあ詩音と早紀にも伝えとく!」
そう言って、樹里はスマホを取り出し、グループチャットを開く。
真琴は、隣でグラスを傾ける遼を見て、そっと礼を言った。
……ありがとう、遼。
遼は軽く微笑みながら、グラスを軽く持ち上げた。