The previous night of the world revolution5~R.D.~
「あわわわわ…。あわわわわわわわ…」

「…」

「…ほよ!ほよよよよよ~ん」

「…ねぇ。さっきから、ルトリア何語で喋ってるの?」

「…俺に聞かないでくれ、ベーシュ」

「今回は、いつも以上にやべぇな」

緊張は、人を廃人にする。

それを身に以て体験する俺である。

「今朝のルトリアのツイート、『(ノ-_-)ノ~┻┻(ノ-_-)ノ~┻┻\(^_^)/(ノ-_-)ノ~┻┻』だったもんな」

「怒濤のようにちゃぶ台投げてると思ったら、間に何か挟まってるな」

無意識なんです。

Twittersに何か投稿しなきゃ、と画面を開いたのは良いものの、自分がキーボードで何を打ったのか記憶にない。

「大丈夫か、ルトリア。しっかりしろ」

ルクシーが、俺の肩にそっと手を乗せた。

「うぴゃぁぁぁっ!」

そのことにまたびっくりして、奇声を発してしまった。

「…本当に重症だな」

「この調子で、明日のライブ大丈夫か?」

「まぁ、本番前のルトリアって、いつもこんな感じだから…」

「それでも何だかんだ上手く行ってるもんね」

四人が何か話してる気がするけど、正直ほとんど聞こえてない。

頭の中、緊張で一杯。

「明日は特に、集大成のライブだからな」

ミヤノがそう言った瞬間、俺はエビのようにびくっ!とした。

…そう、集大成のライブ。

今度のライブは、『frontier』のyourtubeチャンネル登録者数200万人突破を記念した、特別ライブなのである。

200万人って、何万人?

皆何でそんなに登録してるの?

yourtube観てるときに、手がブルッてなって、うっかりクリックしちゃったの?

でもわざわざ外すのも面倒臭いからそのままにして、そういう人が何万人もいるの?

あるある。あるよねそういうこと。

そういうことだと思おう。

あるいは、サムネイルに映ってるベーシュさんがあまりにも美しいから、衝動的にチャンネル登録しちゃったんだ。

横に映ってるゲジゲジみたいなのは鬱陶しいけど、でもベーシュちゃんが可愛いから登録しよっと。みたいな。

あるある。あるよねそういうこと。

でなきゃ、別名、人型ゲジゲジの俺がボーカルを務める『frontier』のチャンネル登録者数が200万人なんて、絶対有り得ない。

「ふわわわわわ…。ぴゅわわわわわ…」

明日、何千人もの観客の前でライブを行うことになると思うと、震えが止まらない。

ライブチケット、販売開始30分以内ですべて完売したそうだ。

皆別の商品と間違えて買ってない?

リハーサルの為に、ライブ会場にも足を運んだけれど。

軽く運動会出来そうなくらい、広いホールだった。

あんなでっかいホールに、観客がすし詰めになるんでしょ?

どうしよう。「お前みたいなゲジゲジ見たくねぇから引っ込んでろ。お前は引っ込んでベーシュちゃんを出せ」とか野次飛ばされたらどうしよう。

そのときは大人しく引っ込んで、会場の整理・誘導スタッフになろう。
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