The previous night of the world revolution5~R.D.~
誰かの怒鳴るような声が聞こえた俺は、とうとう恐れていたことが起きたのか、と思った。

「可愛いベーシュちゃん狙いでCD10枚も買ったのに、グロいゲジゲジしか出てこねぇじゃねぇか!どうなってんだ!」と怒りを爆発させているのかと。

その怒りは当然だ。

可愛いベーシュちゃんが出てくると思ってたのに、どや顔のゲジゲジが次々と出てきたら、そりゃあ誰だってキレる。

だから、俺のは少なくしましょうって言ったのに!

言わんこっちゃない!

どうしよう。俺が出ていって、「本当済みませんごめんなさい」と土下座するべきか?

いや、しかしただでさえ俺のストラップばかり出てきて、ムカついてるところに、本人が現れたら。

鎮まるどころか、余計怒らせてしまうに違いない。

顔面ボコボコにされても文句言えないぞ。

「一体どうしたんだ…?」

「何かあったの?」

ルクシーや他のメンバーも、異変に気づいたようだ。

いつもなら、余裕を持って迎え入れてくれるはずの会場スタッフが。

何故か、俺達に見向きもせず、血相を変えて右往左往走り回っている。

えっと。俺達どうしたら良いの?勝手に入って良いの?

それとも、待機しているべき?

それとも、やっぱり俺が土下座するべき?

すると、そこに。

「ルトリアさん!皆さん!」

『frontier』のマネージャー、ユーリアナさんが駆けつけた。

地獄に仏とはこのこと。

「ユーリアナさん!どうしたんですか?」

息を荒くしたユーリアナさんは、会場スタッフ同様、血相を変えて叫んだ。

「デモです!会場内に、刃物を持った10人が立て込もって、誰も入れないんです!」

「…!?」

で…デモ?

「ルトリアストラップがあまりにもグロいから、金を返せと観客がキレてるんです」と言われた方が、まだ納得出来た。

立てこもりって…一体、どういうことなんだ?
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