The previous night of the world revolution5~R.D.~
俺の指示で、会場スタッフは、拡声器を使って観客達に説明した。

会場内の火災報知器が誤作動を起こし、警備隊を呼んで、今緊急点検中である。

万一のことがあっては大変なので、観客の皆様は、申し訳ないが、もう少し会場の外で待機して欲しい。

安全が確認出来次第、順次開場を開始する。現時点で、ライブの開始時間に変更はない。

繰り返し繰り返し、声が枯れそうになりながら、必死にそう説明した。

嘘八百ではあるが、観客達はようやく状況を説明され、少し落ち着いたようだった。

「なんだ点検か、それならさっさとそう言えよ」

「全くツイてないな」

「まぁ、でもライブ開始時間に間に合うんなら良かった」

「早く点検終わらないかなぁ」

なんて声が、あちらこちらから聞こえてきた。

ライブ後、新幹線や夜行バスを予約して帰宅する観客は大勢いる。

近場のホテルを予約している観客だっているだろう。

ライブ時間がずれ込み、彼らの予定を狂わせてしまったら、それだけで『frontier』が風評被害の矢面に立たされる。

この大事なライブの日に、何一つ手違いがあってはいけないのだ。

「済みません、アイズ、それにシュノさん」

「何?」

一緒に来ていたアイズレンシアとシュノさんに、俺はこう頼んだ。

「会場の外に待機して、観客の動向を見ててくれませんか。もし観客に被害が出そうになったら、対処願います」

「分かった。任せて」

「分かったわ、ルレイア」

病み上がりのアイズには、大変申し訳ないが。

そうしてもらうしかない。

「へい!アリューシャは?アリューシャ何したら良い?」

「狙撃ポイントについて、敵の捕捉を頼めますか」

「捕捉だけで良いの?足なり腕なり撃ち抜けば、無力化出来ると思うけど」

その通り。

アリューシャの腕なら、的確に狙い撃ってくれることだろう。それは心配してない。

でも。

「狙撃音が観客に聞こえたら不味いですからね。狙撃は最終手段ってことで」

「ちぇー。しょーがねぇな」

それに、ホールの外壁に穴を開ける訳にもいかないからな。

「ルルシーとルリシヤと俺で、デモ隊を蹴散らします。ついてきてくれますか?」

「当たり前だ。お前を一人で行かせるか」

「ふふ。任せてくれルレイア先輩。これしきの問題、俺達だけで華麗に解決してみせよう」

なんて頼もしい返事だ。

「では、行きましょうか」

俺達が大層楽しみにしてきた、この『frontier』のライブに。

ケチをつけようとする輩は、誰であっても許す訳にはいかない。

しっかり責任取ってもらわないとな。
< 110 / 627 >

この作品をシェア

pagetop