The previous night of the world revolution5~R.D.~
華弦は、すぐさまパンフレットを持ってきてくれた。

俺はそのけばけばしい黄色のパンフレットを、ルルシーと共に読み込んだ。

本じゃなくて、あくまでパンフレットなので、ツラツラと教義が書いてある訳ではない。

だが、言いたいことの大筋は分かった。

「…反吐が出る綺麗事ですね」

「…あぁ。反吐が出る綺麗事だな」

もうね、本当。

殺したくなるくらい綺麗事。

宗教って、こんなもんなの?

「神を愛せ、人を愛せ、世界を愛せ…。『天の光教』にとって、愛って何なんですか?その辺でバーゲンセールされてるんですかね?」

愛って言葉自体は、俺も嫌いじゃないよ。

むしろ好きなくらい。

でもね、愛ってのはバーゲンセールするもんじゃねぇんだよ。

愛という言葉以上に、重ねれば重ねるほど重みが薄れる言葉があるか?

誰も彼も愛せる訳ねーだろ。

頭おかしいのか。

「こんなものがルティス帝国の国教になったら…。俺は外国に逃げるよ」

と、ルルシー。

俺もついていく。

パンフレットにでかでかと写っている、へらへら笑ってる信者の顔が、もう胡散臭くて仕方ない。

わざとなのか知らないが、若者の写真ばかりだし。

「あー、気持ち悪い…」

もうこんなものは見たくもないので、パンフレットを華弦に返そうと手に取ると。

パンフレットの間から、ひらり、と何かが床に落ちた。

…?

「…これは?」

拾ってみると、そこには、

『天の光教』講演会招待券、と書かれている。

講演会だと…?

「あぁ、済みません…。パンフレットに同封されていたものです」

と、華弦。

こんなものまで一緒につけて配布してるのか。

「…ん?」

「?どうした、ルレイア」

「これ…。よく見たら、日付明日じゃないかですか」

「あ、本当だ…」

「…」

…これこそ、天の思し召しって奴なのか。

行けと。聞きに行けと。

なんか、ここで聞きに行ったら負けたみたいだけど。

「当日参加可能、講演料無料、お連れ様何名でも参加可能って…。いかにも胡散臭いですね」

「でも都合が良いんじゃないか?『天の光教』とやらを知るには…」

「まぁ…行ってみる価値はありますかねぇ…」

パンフレットだけじゃ、正直よく分からないし。

折角の機会だ。『天の光教』とやら、その綺麗事が俺に通用するかどうか、試させてもらおうじゃないか。
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