The previous night of the world revolution5~R.D.~
「物凄い数の人ですね…」

「あぁ…。収まりきるのか?このホールの中に…」

「人混みうぜぇ…。全員鎌で刈り倒していきてぇ…」

「…お前な…稲刈りじゃないんだぞ」

だって稲刈りもしたくなるよ。

この人混みじゃ。

お前らどんだけ講演聞きたいんだよ。馬鹿なのか?

元々、別に人混みが苦手って訳じゃない。

人混み嫌いなら、『frontier』のライブ会場なんて行けないし。

でも、ここの喧騒は違う。

ライブ会場のような、期待と興奮と高揚感に溢れた、わくわくする熱気を一切感じない。

むしろ、これから神聖な儀式を目にすることになる、自分達はその目撃者に選ばれた…!という、畏怖と狂気を感じる。

既に「洗脳済み」ってことかよ。

いつからシェルドニア王国になったんだ?ここは。

案の定、あっという間に二階席まで満席状態、すると通路にまで人が立ち始めた。

立ち見ならぬ、立ち聞き。

そこまでして聞きたいのか、お前は。

ホールの中はとにかく人、人、人で一杯だ。

もう本当に全員刈り取りたい。

ルルシー以外全員刈り取りたい。

そしたら何もかも解決するんじゃないかな、もう。

あー、なんか我慢出来なくなってきたから、やっぱり全員刈ろうかなと本気で思い始めた、そのとき。

観客席から、割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響いた。

壇上に、一人の女性が上ったのである。

…この女。

彼女はマイクスタンドの取り付けられた演台の前に立つと、深々とお辞儀をし。

そして、その神聖な言葉を発し始めた。

まずは、自己紹介からだった。

「皆さん、こんにちは。私はルチカ・ブランシェットです」

…パンフレットの一ページ目に、この女の顔が載っていた。

この女こそ、『天の光教』の教祖。

ルチカ・ブランシェットその人である。
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