The previous night of the world revolution5~R.D.~
「この調子で彼女が布教を続ければ、更に信者は増えるだろう。厄介なことになるな」

「…」

やだなぁ。

ちょっと皆で我慢して、今だけ不況の流れに身を任せて、また回復するのをじっと待てば良いものを。

な~んでこんなややこしい方に、ややこしい方に持っていこうとするのか。

「…で、さしあたって、地下に監禁している『天の光教』8人の構成員の処遇についてだけど」

「…あ」

アイズに言われて、初めて思い出した。

いたねーそんな奴ら。

もう忘れてたよ、俺。皆覚えてた?

「『青薔薇連合会』が『天の光教』との敵対姿勢を見せた以上、彼らを安易に殺すことは出来なくなった」

…さては、アイズめ。

『天の光教』が勢力を拡大していることから、こうなる事態を見越して、彼らを殺さず地下に幽閉してたな?

そうだね。

あの8人を殺せば、『天の光教』は『青薔薇連合会』と敵対する口実にされていただろう。

「いっそ彼らを人質にしたら良いんじゃない?人間が平等だって言うなら、あいつらは仲間を見捨てられないでしょ」

シュノさんの提案である。

なかなか魅力的な提案だ。

人は皆平等、幸せになる権利がある、なんてあれだけ偉そうにほざいてるんだから。

人質の信者を見捨てれば、「おいお前ら、平等じゃなかったのか。仲間も助けないのか」と責め立てられるよな。

綺麗事を言うなら、その綺麗事に見合う体面も気にしなきゃならんからな。

「どうだろうな。むしろ、8人を見捨てて、彼らを殉教者として神格化する可能性もある」

と、ルリシヤ。

うーん…。

残念だけど、俺もそう思う。

さすがに、その8人の為だけに、『天の光教』全ての信者を巻き込む訳にはいかないだろうからな。

むしろ俺達に8人を殺させて、俺達を悪者に仕立てあげる方が効果的だ。

「…彼らの処遇は、慎重になった方が良いな」

「そうですね」

殺すことは簡単だが、殺してしまえば取り返しがつかない。

今はまだ、放置しておいた方が賢明だろう。

「…?…??」

この話し合いの中、アリューシャだけが首を傾げていた。

会話の難易度が、ちょっとアリューシャの脳みそに追い付いてないらしい。

「よ、よく分かんねぇけど…。撃ち抜いて欲しい奴がいたら、アリューシャにお任せ!」

「…アリューシャ…お前な…」

呆れるルルシー。

苦笑するアシュトーリアさん。

平和だ。

アリューシャにルチカ教祖を撃ち殺してもらったら、それはそれで楽なんだけど。

そんなことしたら、残された信徒達が、制御不能の暴徒と化してしまう。

「…ふぅ…」

『青薔薇連合会』でさえ、この有り様。

帝国騎士団の連中は、今頃どんな顔して頭を抱えていることやら。
< 149 / 627 >

この作品をシェア

pagetop