The previous night of the world revolution5~R.D.~
だって、考えてもみろ。

今まで何度も、帝国騎士団は危機を迎えてきた。

しかしその度、オルタンスは呑気な顔をして。

『frontier』のマニキュアだの、ルレイアとハムスターランドだの、どうでも良いことばかり言って、アストラエアを激怒させてきた。

そのオルタンスが、今回はどうしたというのだ。

全くふざけることなく、国家の危機を救おうとしている。

いや、本来これが正しい帝国騎士団長の在り方であって、今までがおかしかっただけなのだが。

今まであのふざけた態度だったぶん、いきなり真面目になられると、気持ち悪くて仕方ない。

「お前がふざけてもいられないくらい、とうとうルティス帝国存亡の危機と見たか?」

「…」

オルタンスは、手元の資料をパサ、とテーブルに置き。

真剣極まりない眼差しで、俺を見た。

見んな。

「…アドルファス」

「何だよ」

「『frontier』を知ってるか?」

「知ってるよ」

お前がお熱になってるバンドだろ?

いつぞやの慰問会にも来てたじゃないか。

あの頃は平和で良かったな。

「その『frontier』のyourtubeチャンネルが、登録者数200万人突破を記念して、特別ライブを行ったんだ」

「…それが何なんだ?」

「俺もチケットを買って、ライブグッズも前販売で買って、あとはライブ会場で、会場限定の特別盤CDを買い、ライブに臨むだけだった」

「…それがどうしたんだよ」

「それなのに…」

オルタンスは、物凄く悔しそうな顔をして、拳を握り締めた。

「ライブに出掛けようとした直前に、帝立美術館で『天の光教』のデモ行為が起きて、その対策のせいで、ライブに行けなかった…」

「…」

「ワンチャン、ライブ会場でルレイアに会えるかと思って、ずっと楽しみにしてたのに…」

「…」

「だから、俺は決して、『天の光教』を許さない」

きっぱりと断言する、帝国騎士団長。

…そうか。

そんな理由だったのか。

そんなことだろうと思ってたよ。

ある意味いつも通りで、俺は安心したよ。
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