The previous night of the world revolution5~R.D.~
…相変わらず、凄い格好だな。

ルレイアを見るなり、俺はそう思った。

何なら、50メートルくらい先から、異様な気配を感じていた。

何だこの寒気は、と思っていたらルレイアだった。

髪に黒い蝶の飾りをつけ、全身真っ黒の衣装を身に付け、爪のマニキュアまで黒ければ、指輪まで黒い。

正に死神。

全身真っ黒なだけに、胸につけた青い薔薇のブローチの目立つこと。

しかも、うっかり目眩のしそうな妖艶な香水の香りを、ぷんぷん漂わせている。

これが、天下のルレイア・ティシェリー。

全く。帝国騎士団に入ったばかりのときの、あの正義感の強い純真無垢だった青年は何処へ消えたのやら。

きっと、あれはもう死んだのだろうな。

ルレイアだけではない。

彼の後ろには、同じく全身真っ黒で、しかもリボンやレースや黒い薔薇の飾りをふんだんにあしらったドレスを、見事に着こなした女幹部までいる。

あいつ、確かシェルドニア王国の一件のとき、会議室に乗り込んできた女だよな。

こんな格好はしているが、恐らく『青薔薇連合会』では三本の指に入るかというほどの実力者だろう。

で、奇怪な格好をしているのはもう一人。

服装はまだしも、何より目立つのは、顔の上半分を覆う黒い仮面。

怪人か何かか?

確か『青薔薇連合会』には、新しい幹部が入ったんだっけ。

しかもそいつは、ルレイアに匹敵する能力を持っているとか。

名前は確か…ルリシヤだったか。

何処の仮面舞踏会に招待されたんだ、って格好だが、こいつも要注意だな。

『青薔薇連合会』の幹部は、三人がまともで、残りの三人が奇怪だということが分かった。

まぁ、一番ヤバいのは間違いなく、ルレイアなのだが。

「いやはや、ご無沙汰してますねぇ。憐れな帝国騎士団の皆さん」

それが、ルレイアの第一声だった。

…言い返せないのが癪だな。

ルレイアは…いや、元帝国騎士だったルレイアだからこそ、俺達の今の立場は、よく分かっていることだろう。

終始にやにやとしているのも、俺達を小馬鹿に出来る立場だからこそ。

悔しいが、こればかりはどうしようもない。

アストラエアやユリギウスは、歯軋りせんばかりにイラついているようだったが。

「…久し振りのルレイアだ」

オルタンスだけは、嫌味を言われようが小馬鹿にされようが、ルレイアに会えて嬉しそうだった。

…お前は呑気な奴だな。

「本日はお招き頂き光栄です。首領、アシュトーリア・ヴァルレンシーに代わりまして、アイズレンシア・ルーレヴァンツァ以下、『青薔薇連合会』幹部六名が、会談に参加させて頂きます」

『青薔薇連合会』次期首領が、オルタンスに挨拶した。

こいつが、幹部組をまとめるリーダー的存在らしい。

半数が奇怪な変人の幹部なのに、よくまとめられるもんだ。

一体どんな器をしてるんだか。

「こちらこそ光栄だ。シェルドニアの一件からまだそれほどたっていないのに、『青薔薇連合会』は変わらず…」

「ねぇ、前置きはどうでも良いんで」

オルタンスが返礼しようとしたところを、ルレイアが諌めた。

素人なら、それだけで失神しかねない威圧感だった。

「お互い、親しく挨拶するような立場じゃないはずですが?」

「…そうだったな」

前置きや、下らないご託は良い。

さっさと本題に入れ、と。

…その通りだな。

そんな悠長なことをしていられる場合でもない。

折角、『青薔薇連合会』のそうそうたる幹部組が足を運んできてくれたのだ。

前置きは必要ない。早速、本題に入るとしよう。
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