The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…どういうことだ?喧嘩を売ったとは…」

「そのままの意味ですよ。『俺達はお宅に敵対する』ってはっきり言ってやりました」

実質、宣戦布告だ。

「誰に?」

「ルチカ・ブランシェット。ご存知でしょう?」

「…!『天の光教』の教祖に、会ったのか?」

「えぇ」

まさか俺が、既にルチカ教祖に会っていたとは思うまい。

さすがのオルタンスも、少し驚いた様子。

良いねぇ。

俺の手のひらの上で踊ってくれて、最高に楽しいよ。

「色々経緯があって接触したんですが…。まぁ、彼らの理想、思想には共感出来ないと判断しましてね。盛大に喧嘩を売らせてもらいました」

「…」

「そんな訳で、既に『天の光教』は我々にとって敵なんですよ。だから、味方するとしたらあなた方です」

正直なところ。

俺だって、好き好んで帝国騎士団と手を組みたい訳じゃない。

こいつらが俺の仇である事実は、一生変わらないのだから。

でも、ルティス帝国で『青薔薇連合会』の安泰を守るには、仕方がない。

それに、シェルドニア王国の一件のとき、こいつらも微力ながら、協力してくれたらしいし。

精々、その分の借りくらいは返してやっても良いだろう。

俺は優しいからな。

「…心強い言葉だな」

「でしょう?で、俺達の信頼の証に、これを差し上げます」

俺は、黒いUSBメモリを差し出した。

「…これは?」

「『天の光教』ルチカ・ブランシェットの講演会に参加しましてね。そのときの御大層な演説を、こっそり録音させてもらいました」

「…!」

参加自由の講演会とはいえ。

帝国騎士団の人間が、『天の光教』の講演会に潜り込むのは難しかろう。

もしバレたら、吊し上げに遭うだろうからな。

「ついでに、俺がルチカ教祖と直談判したときの音声も入ってます。これをあげますよ」

「…タダで、とは言わないだろうな?」

「そりゃあ勿論」

何度も言うように、俺は優しいからな。

こんな貴重な資料を、タダであげる訳にはいかない。

「今回ばかりは、情報は全て共有してもらいます。腹の探り合いはなしです。もしそちらが掴んだ情報を俺達に隠していたことが発覚したら、その時点であなた方を敵とみなします」

「…」

「それが呑めないなら、今すぐそのUSBは返してもらいますし、俺達は二度とここに足を運ぶことはないでしょう」

「…そうか」

さて、これが俺達の提示する条件だ。

これを向こうが呑めば良し。

呑まないなら、俺達は俺達で行動させてもらう。

「…時間をあげましょうか?」

お宅らも一枚岩ではないことは分かっている。

話し合う時間が要るなら、少しくらいは与えてやっても良いが。

しかし。

「いや、必要ない」

ほう?

「その条件を呑もう。共に、ルティス帝国を守ってくれ」

オルタンスはきっぱりと言った。

迷いはなかった。

「良いんですか?独断で決めて」

後でアストラエアやユリギウスに、文句言われるんじゃないの?

非合法組織と手を組むなんて…!とか何とか。

「ルティス帝国を守る為だ。形振り構ってはいられない。帝国騎士であるならば、毒を啜ってでも、国を守らなければならない」

「…あなたが言うと、説得力が違いますね」

国を守る為に、俺という人間を捨てたお前が言うと。

「良いでしょう。『天の光教』の問題が片付くまで、精々お互い利用させてもらいますよ」

「宜しく頼む」

帝国騎士団と手を組むのは、本意ではない。

だが、それはお互い様。

それでも守らなければならない。

ルティス帝国を、胡散臭い宗教団体に乗っ取られる訳にはいかないのだから。
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