The previous night of the world revolution5~R.D.~
ルチカ・ブランシェットの側近達は、あからさまに俺に敵意の眼差しを向けていた。
そんなことはない。例え豊かな頃であっても、『天の光教』に入信していた、とでも言いたげだが。
口だけなら何とでも言えるからな。
好景気が続いてたら、『天の光教』のパンフレットなんて、一瞥もせずにゴミ箱に捨てていただろうよ。
「信者の数が多かろうと少なかろうと、神の教えは変わりません。全ては、神の思し召しなのです」
…神の思し召し、ね。
便利な言葉だな。都合の悪いことは、全部それで逃げられる。
「あぁ、そうかい。やっぱり俺は、あんたの宗教を信じることは出来そうにないな」
「それは、あなたがまだ世俗的な旧世代の考え方に囚われているからです。神の教えに従い、その愛に触れれば、あなたも変わることが出来るでしょう」
あぁ、はいはい。
そうでしょうね。
一生そう繰り返してれば良いさ。
すると、オルタンスがまたしても、攻撃的な言葉を投げ掛けた。
「…宗教活動は自由だ。だが、これ以上のデモ行為は、最早看過出来ない」
「つまり、どういう意味ですか?」
「今後『天の光教』の信徒達が行ったとみられるデモ行為を確認した場合、信徒達を逮捕する」
「…!」
帝国騎士団から『天の光教』に向けた、宣戦布告に等しい。
手を取り合って譲歩するのではない。
真っ向から否定する。
頭が堅いと思われるかもしれない。
でも、政治に宗教を持ち込んではいけない。
何を信じ、何を信じないかは、個人の自由なのだから。
「なんと横暴な…。声をあげる術のない弱者の叫びを、暴力によって抑圧すると言うのですか」
「暴力を振るうつもりはない。ただ、デモ行為を止めるだけだ。治安維持の為に」
「治安維持…!?治安を乱した帝国騎士団が、それを言うのですね」
こっちにしてみりゃ、あんたらの方がよっぽど治安を乱してるけどな。
「飢えたことがないから、生活に困ったことがないから、神に救いを求める者の気持ちが分からないのです!貴族制度というものが、その諸悪の根源…!」
「体制批判は結構だが、俺達は先代の帝国騎士達が守ってきたこの国を、次代に受け継がせる義務がある」
「…国民を犠牲にしても、ですか?」
「国民を守る為だ。神がいたとして、神は人を救わない。いつだって、人を救うのは人だ」
…酷い不信仰者だな。俺達は。
でも、それが帝国騎士団の総意だ。
「…あくまで、『天の光教』を認めてはくださらないのですね」
「宗教団体としては認める。だが、少なくとも、それによって体制を変えることはない」
「…分かりました」
ならばもう話すことはないとばかりに、ルチカ教祖は立ち上がった。
「神の教えに従うことも、人を愛することも出来ない…。やはり、憐れな人間達です。あなた方は」
「そうか」
何と言われても、考えは変わらない。
「何人も、神を信じる心を打ち砕くことは出来ません。信仰は、人を、国を変えるのです。あなた方も、いずれそれを知ることになるでしょう」
ルチカ・ブランシェットはそう言い残して、丁重に一礼し。
そして、二人の側近達を連れて、去っていった。
引き留めはしなかった。
…交渉決裂、ってところだな。
分かっていたことではあるが、やはり後味は悪かった。
そんなことはない。例え豊かな頃であっても、『天の光教』に入信していた、とでも言いたげだが。
口だけなら何とでも言えるからな。
好景気が続いてたら、『天の光教』のパンフレットなんて、一瞥もせずにゴミ箱に捨てていただろうよ。
「信者の数が多かろうと少なかろうと、神の教えは変わりません。全ては、神の思し召しなのです」
…神の思し召し、ね。
便利な言葉だな。都合の悪いことは、全部それで逃げられる。
「あぁ、そうかい。やっぱり俺は、あんたの宗教を信じることは出来そうにないな」
「それは、あなたがまだ世俗的な旧世代の考え方に囚われているからです。神の教えに従い、その愛に触れれば、あなたも変わることが出来るでしょう」
あぁ、はいはい。
そうでしょうね。
一生そう繰り返してれば良いさ。
すると、オルタンスがまたしても、攻撃的な言葉を投げ掛けた。
「…宗教活動は自由だ。だが、これ以上のデモ行為は、最早看過出来ない」
「つまり、どういう意味ですか?」
「今後『天の光教』の信徒達が行ったとみられるデモ行為を確認した場合、信徒達を逮捕する」
「…!」
帝国騎士団から『天の光教』に向けた、宣戦布告に等しい。
手を取り合って譲歩するのではない。
真っ向から否定する。
頭が堅いと思われるかもしれない。
でも、政治に宗教を持ち込んではいけない。
何を信じ、何を信じないかは、個人の自由なのだから。
「なんと横暴な…。声をあげる術のない弱者の叫びを、暴力によって抑圧すると言うのですか」
「暴力を振るうつもりはない。ただ、デモ行為を止めるだけだ。治安維持の為に」
「治安維持…!?治安を乱した帝国騎士団が、それを言うのですね」
こっちにしてみりゃ、あんたらの方がよっぽど治安を乱してるけどな。
「飢えたことがないから、生活に困ったことがないから、神に救いを求める者の気持ちが分からないのです!貴族制度というものが、その諸悪の根源…!」
「体制批判は結構だが、俺達は先代の帝国騎士達が守ってきたこの国を、次代に受け継がせる義務がある」
「…国民を犠牲にしても、ですか?」
「国民を守る為だ。神がいたとして、神は人を救わない。いつだって、人を救うのは人だ」
…酷い不信仰者だな。俺達は。
でも、それが帝国騎士団の総意だ。
「…あくまで、『天の光教』を認めてはくださらないのですね」
「宗教団体としては認める。だが、少なくとも、それによって体制を変えることはない」
「…分かりました」
ならばもう話すことはないとばかりに、ルチカ教祖は立ち上がった。
「神の教えに従うことも、人を愛することも出来ない…。やはり、憐れな人間達です。あなた方は」
「そうか」
何と言われても、考えは変わらない。
「何人も、神を信じる心を打ち砕くことは出来ません。信仰は、人を、国を変えるのです。あなた方も、いずれそれを知ることになるでしょう」
ルチカ・ブランシェットはそう言い残して、丁重に一礼し。
そして、二人の側近達を連れて、去っていった。
引き留めはしなかった。
…交渉決裂、ってところだな。
分かっていたことではあるが、やはり後味は悪かった。