The previous night of the world revolution5~R.D.~
ともかく。

「爪の話をしに来たんじゃねぇだろ。さっさと本題に入ろうぜ」

お互い、世間の嫌われ者同士。

辛気臭い話は、さっさと終わりにしたい。

ただでさえ、毎日憂鬱なのに。

「全くですよ。嫌な話はさっさと終わらせましょう」

そう言って、ルレイア達は席についた。

ぷんぷんと香水の香りが漂ってきて、酔ってしまいそうだ。

全く、つくづくとんでもない男を敵に回してしまったもんだ。

今だけは、信頼出来る味方であると思いたいが…。

「で?あなた方はどうするんです。毎日これでもかってくらいバッシングされてますけど」

ルレイアの質問は、相変わらず俺達に全く遠慮がなかった。

事実だから、言い返しようがないんだが。

「基本方針は変わらない。『天の光教』には、断固として厳しく対応するつもりだ」

「ふーん…。融和策は考えてないと?」

「あぁ。考えてない」

オルタンスは、きっぱりと答えたが。

融和策が、全く出なかった訳じゃない。

特にルーシッド辺りは、あまりの帝国騎士団への批判に、『天の光教』と融和する道を模索するべきではないか、と提案してきた。

帝国騎士団内でも、ルーシッドと同様の意見が出ていることも知っている。

気持ちは分かる。

これほど国の為を思い、落ち込んでいく経済を立て直す為に粉骨砕身し。

それがようやく実を結び始めたというのに、世間はそのことには全くと言って良いほど触れず。

ただただ、『天の光教』に煽られるがまま、俺達を敵だと認識している。

新聞を開けば、どれだけ帝国騎士団が横暴で、王政が唾棄すべきものであるかという記事が並んでいるし。

テレビをつければ、ニュースキャスターや政治専門家(自称)が、好き勝手な言葉で俺達を批判する。

利己主義だとか、権威主義だとか。

旧世代的思考だとか、国民のことを考えてないとか。

知らない奴は、好きなこと言えるよなぁ。

俺達以上に国民のことを考えてる奴が、他にこのルティス帝国にいるのか?

それくらい、毎日頭を悩ませているというのに。

あいつら、弱い者いじめの精神で俺達をバッシングしてないか?

名誉毀損で訴えてやろうか。

そんなことしたら、もっとバッシングされるからしないけどな。

そりゃこんだけ批判されれば、こちらも態度を軟化させ、『天の光教』と融和する姿勢を見せた方が良いんじゃないか、というルーシッドの意見も分かる。

その方が、国民感情に寄り添っているのではないかと。

俺も、その考えが脳裏を掠めなかった訳じゃない。

そうした方が賢明ではないかと、考えたこともある。

しかし。

「ここで折れる訳にはいかない」

オルタンスは、さっきまでふざけてたのが何だったのかと思うほどに。

きっぱりと、威厳を見せつけて、そう言った。

…お前な。

そう言えるんだから、普段からその態度でいろよ。

今だけは、帝国騎士団長として認めてやるよ。
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