The previous night of the world revolution5~R.D.~

sideルレイア

─────…随分、肝が据わっているようで。

「女王アルティシアや、あなた方を支持している国民は、ほとんどいませんよ。世論は完全に『天の光教』の味方。もし事が落ち着いたとしても、信頼回復には時間がかかるでしょうね」

「だろうな」

「国民の支持率を考えたら、ある程度『天の光教』を認めて…融和策を取るべきだと思いますけど」

…と、言ってみたものの。

俺自身は、本当に融和策を取るべきなどとは思っていない。

単なる鎌かけだ。

「『青薔薇連合会』らしくないな」

オルタンスは、そんな俺の内心を見透かしたように言った。

…ほう。

「お宅らの為に言ってるんでしょう。俺達は元々マフィアだから、国民からの支持なんて必要ない。でもお宅らは、国民の顔色を伺わなきゃならない立場でしょう?」

「そうだな。気遣い感謝する」

気遣った覚えはない。

「だが、今回は国民の顔色よりも、守るべきものがある」

「ほう。三度の飯より国民の顔色を伺うのが大好きなあなた達が、一体どういった心境の変化ですか」

「秩序の維持だ。俺達は、ルティス帝国の秩序を守らなければならない」

…へぇ。

若造の分際で、大層なことを言うじゃないか。

え?お前の方が若造だろうって?

…は?

「秩序ですか。あなたが言うと説得力が違いますね」

「そうだな」

その「秩序」とやらの為に、俺を裏切り者として帝国騎士団から追放したんだから。

あの頃から変わっていないようで、安心したよ。

全ては国の為。女王の為。

その為なら、味方の犠牲も、おのれの犠牲も関係ない。

…この男。

もし国民達に弾劾されて、自分が帝国騎士団長の座を降りることになっても構わない。

それが帝国騎士団の…そして、ルティス帝国を守ることに繋がるのなら。

…良い覚悟だ。オルタンス・イデア・トゥーランドット。

そう来なくては。

「…良いでしょう。一つ貸しにしといてあげますよ」

「…どういう意味だ?」

「救ってあげるって言ってるんですよ。このルティス帝国を」

帝国騎士団なんぞ、糞どうでも良い。

王政なんて滅びてもらっても構わないし、貴族共もいなくなってくれて良い。

だが、『天の光教』なんて訳分からん宗教に、この国を渡すつもりはない。

待っていたのだ。ずっとこの時を。

景気が回復し始めるこの時を。

あと、一押し。

俺は、困惑する帝国騎士団の面々に、魔性の笑みを浮かべた。
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