The previous night of the world revolution5~R.D.~
「確かに、アシミムが再びあの装置を使って、俺を洗脳しようとする危険性はありますけど」

その通りだ、みたいな顔しないで。

あくまで、その可能性があるよ、って話だから。

「でも、アシミムはラトヴィを取り戻すという目的を果たしていますし、今更俺を洗脳する意味があるとは思えません」

「そんなん分かんねぇじゃん。ルレ公洗脳するような奴なんだから」

それを言っちゃおしまいですよ、アリューシャ。

「大体アリューシャは、シェルドニア語喋れないでしょう?」

「喋れるわそれくらい!アイアムアリューシャ!ワタシアリューシャヨ、ヨロシク!」

アリューシャ、君は根本的に間違ってる。

「それに、俺が行かないとアシミムに対する『脅迫』になりません」

俺には、一度アシミムにゲロ顔をさせた実績がある。

あのときの恐怖を思い出させるには、俺が行かなくては。

「絶対無事に帰ってきます。約束しますから」

「…ルレイア…」

俺は、魂に刻み込んだ。

自分の救世主が誰なのか。

アシミムが懲りずに俺にあの装置を使うなら、やれば良い。

受けて立ってやる。

「…それでも、俺はついていくぞ」

頑ななルルシーである。

ここで断ったら、怒るくらいでは済まないだろう。

絶交されかねない。

「分かってます。ルルシーはついてきてください」

「そこでルレイア先輩。シェルドニア編でルレイア先輩を助ける為に暗躍した、この俺を連れていくと言ってくれたら、当日変装して飛行機に忍び込む手間が省けて、有り難いんだが」

断ってもついてくる気満々のルリシヤ。

…分かってますよ。

「ルリシヤは断れませんね。シェルドニアの一件で、あれだけ世話になってるんだし」

「それは何よりだ」

ルリシヤはシェルドニア語も堪能だし。

何より。

ルリシヤなら、俺に万一のことがあっても、ルルシーを託せる。

「…結局、前回シェルドニアに行った三人に託すしかないんだね」

アイズは、溜め息混じりにそう言った。

アリューシャの不満そうな顔と、シュノさんの心配そうな顔。

あまりに申し訳なくて、いっそ皆で行こうか、と言いたくなるが。

この状況で、『青薔薇連合会』の幹部全員が国を空ける訳にもいかないし。

「大丈夫ですよ。このルレイア・ティシェリー。死神が呼びに来ても、返り討ちにしてやりますから」

神は信じないが、死神は信じる。

死神は信じるが、黙って連れていかれるつもりはない。

「…分かったよ。アシュトーリアさんには、私から説得しよう」

「アイズ…!」

仕方ないという風に、アイズは折れてくれた。

「でも、必ず無事に帰ってくるんだよ。良いね」

「勿論です」

まだ、ルルシーとの結婚式もしていないのに。

こんなところで、くたばるつもりは毛頭ない。
< 207 / 627 >

この作品をシェア

pagetop