The previous night of the world revolution5~R.D.~
質素倹約令って、皆さんご存知だろうか。

まぁ簡単に言えば、皆節約して、贅沢すんなよ、ってことだ。

で、それが何故我が家に発令される?

「ど、どういうこと…?」

「…これを見てください、ルヴィアさん」

フューニャは、使い込まれた一冊のノートを俺に手渡した。

何これ?

表紙には、『クランチェスカ家食費家計簿』と書かれていた。

あっ、フューニャ食費に家計簿つけてくれてたんだ。

ちなみに我が家は、食費とフューニャのお小遣いだけ毎月フューニャに渡し、残りは俺が管理している。

家計簿を開いてみると、結婚当初からつけてくれていたらしく、最初のページの日付はかなり古かった。

こんなときからつけてくれてたのか…。うちの嫁は、なんてしっかり者なんだ…。

俺、独身のとき、家計簿なんてつけたことがなかったぞ。

ぱらぱらと家計簿を捲る。多少の誤差はあれど、毎月収支は大して変わらない。

毎月、上手いことやりくりしてくれてるみたいだ。

俺としては、別に「今月ちょっと足りないので、追加してください」と言われれば、快く渡すつもりでいるんだがな。

箱庭帝国出身のフューニャに、衣食住で苦労させるつもりはない。

特に食べることについては、絶対に不安にはさせない。

それなのに、わざわざ家計簿を渡してくるということは…。

慌てて最近のページを捲ると、フューニャの言葉の意味が分かってきた。

ここ数か月、やや出費が嵩んでいる。

フューニャが無駄遣いをしている?

そんなはずがない。

食材をお高いものに買い換えた?

それも違う。

答えは、家計簿に貼り付けられたレシートに刻まれている。

買っているものは、今までと大差ない。

別にお高い食材を立て続けに買ったとか、おやつをいつもより多めに買いましたとか、そういうことではない。

ならば、何故食費が嵩んでいるのか。

答えは簡単。

同じものを買っているのに、食材の値段が上がっているのだ。

例えば、数か月前まで、キャベツは一玉100円だったのに。

ここ最近は、同じキャベツ一玉でも、値段が150円くらいに上がっている。

それだけではない。

全体的に、食材の値段が少しずつ上がっている。

よくよく見たら、以前はお買い得品198円だったものが、今は同じものが398円と、倍近くにつり上がっている食材もある。

中には、値段は以前と変わりないものの、よく見たら内容量が半分近くに減っているものもある。

フューニャも出来るだけお安く済ませようと、買うものを選んでくれてはいたのだろう。

だが、パンや牛乳や米や、所謂必需品の食材ばかりは、どんなにつり上げられても、言い値で買うしかない。

そのせいで、ここ数か月の食費が高くなっているのだ。

一応、今のところ毎月渡している食費で賄ってくれているが。

わざわざ家計簿を見せてくるということは、これ以上の現状維持は厳しい、ということなのだろう。

これは気づかなかった。盲点だった。

普段、スーパーなんてほとんど行かないせいだ。

ルティス帝国が、最近不況に陥りつつあることは、俺も知るところ。

『青薔薇連合会』は、アシュトーリアさんやアイズレンシアさんの手腕もあり、今のところ不況の影響はそれほど受けていない。

だからこそ、家庭の食費についてまで頭が回らなかった。

だから俺は、お義姉さんに怒られるんだな。

ここ数か月、フューニャは食費のことで毎日頭を悩ませていたのだろう。

本当に、申し訳ないことをした。
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