The previous night of the world revolution5~R.D.~
それでも熱心な信者は、街頭に立って必死に布教活動を進めた。

黄色いパンフレットを配り、神の教えとやらに帰依するように言い続けた。

しかし、今やその言葉に耳を貸す者はいない。

彼らには、もう『天の光教』など必要ない。

生活に余裕が出てきた人々は、もっと楽しいことを求めている。

簡単に言えば。

小難しい神の教えよりも、次の『frontier』の新曲がいつ公開されるかの方が、遥かに重要なのだ。

そんな人々に、どれだけパンフレットを配って呼び掛けても、心に響くはずがない。

パンフレットは無惨にも、コンビニや駅のゴミ箱に捨てられ。

あるいは、精々便利な鍋敷き代わりに使われるだけ。

あんなインチキパンフレット、鍋敷きに使うくらいが丁度良いな。

むしろ、鍋敷きにしてもらっただけ感謝しろ。

紙とインクの無駄。

実に憐れだ。

人々は、神を、ルチカ・ブランシェットを信じていた訳ではない。

心の拠り所になるものがあれば、何でも良かった。

『天の光教』でなくても良かった。

アメリア教でも良かった。ニア教でもルルシー教でも良かった。

宗教である必要さえなかった。

皆、何処かに不満の捌け口を求めて、そこにたまたま『天の光教』という、都合の良い団体がいたから。

だから、そこに所属しただけで。

彼らの「信仰心」など、所詮その程度のものだったのだ。

目まぐるしく移り変わる、時代の流行の一つでしかなかった。

な?馬鹿みたいだろ?

神なんて、所詮金の力の前には、アリンコが一匹でライオンに立ち向かうようなもんなんだよ。

え?例えが分かりにくい?

じゃあもっと分かりやすく変えてみよう。

近所のガキ大将が、死神モードの俺に立ち向かうようなもの。

な?絶望感しかないだろ?

それと同じなのだ。
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