The previous night of the world revolution5~R.D.~
「さて、『天の光教』の問題も落ち着いてきましたし…。そろそろ、我々の本業の方を進めましょうか」

「…?」

アイズにもらったチョコビスケットを齧りながら、アリューシャはきょとんと首を傾げた。

どうやら忘れているらしいな。

確かに、昔のこと過ぎて、俺達も忘れかけていた。

だが、決して忘れてはならない。

「アリューシャ。忘れちゃいけませんよ」

「らに?」

口の中がチョコビスケットが一杯。

「ほら、『天の光教』の騒動が流行り出す前、アイズを拉致って拷問したならず者共がいたでしょう」

「!!」

それを聞くなりアリューシャは、口からポロポロとチョコビスケットの欠片をこぼしながら、いきなり立ち上がった。

「ほーらった!ふるはねーろ!はいほーをはんらにひややって!はりゅーひゃがふひふいてひゃる!」

物凄く勇ましい雰囲気なのは、伝わってくるのだが。

ちょっと何言ってるのか分からない。

しかし、心配する必要はない。

我らには、頼もしいアリューシャ専門通訳者がいる。

「アイズ。通訳を」

「『そーだった!許さねーぞ!アイ公をあんなにしやがって!アリューシャが撃ち抜いてやる!』」

さすがアイズ。完璧な通訳。

「ほら、アリューシャ。ポロポロ溢してるから。口の中ごっくんしてから喋ろうね」

「うみゅ」

もぐもぐとチョコビスケットを咀嚼。

ルルシーは、呆れのあまり天を仰いでいた。

まぁまぁ。思い出してくれたんだから、良いじゃないか。

『天の光教』は、最早風前の灯火。

俺達の脅威にはなり得ない。

放っておけば、どうせ人々の記憶から消えていくだろう。

だから。

今まで保留していた、アイズ拉致犯の捜索を、本格的に進めていきたい所存である。

まさか放っておく訳にはいかない。

このまま立ち消えにはさせない。

アイズを傷つけやがった糞野郎には、きちんと落とし前をつけてもらわないとな。

これは、マフィアのメンツに関わる問題だ。
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