The previous night of the world revolution5~R.D.~
私が神の存在を信じるようになったのは、まだ幼い頃。

まだ私が…孤児院にいた頃。

私は母の顔を知らない。

父の顔も知らない。

名前すら分からない。出身地も。兄弟がいるのかも知らない。

孤児院の先生に聞くところ、私は生後間もなく、孤児院の前に捨てられていたそうだ。

だから、親の顔も名前も知らない。

それどころか、自分の名前すらなかった。

ルチカ・ブランシェットという名前は、孤児院の先生が適当につけただけの名前だ。

孤児院で暮らしていた頃のことは、今でも思い出したくない。

私は背が低くて、気も小さくて、年嵩の孤児達に、よくいじめられた。

男女問わず、私は孤児院のいじめられっ子だった。

孤児院の先生は、私がいじめられたり、からかわれたりしているのを見ても、何も言わなかった。

あの孤児院は、体罰こそなかったものの、基本的には放任主義だった。

孤児の数に対して、職員の数があまりにも少なかったからだ。

運営していくだけでも大変で、孤児一人一人と向き合っている時間なんてなかった。

当然、私がいじめられていようと、からかわれていようと、先生達はどうでも良かった。

私が何か訴えても、無駄だった。

「忙しいから、後にして」

「そんなこと、自分で何とかしなさい」

返ってくる返事は、そのどちらか。

あの場所に、正義はなかった。

今になって思えば、それでも恵まれた孤児院だったのかもしれない。

だって、孤児である私を受け入れてくれた。

本当に過密な孤児院じゃ、追い出されたり、孤児院から孤児院へと、たらい回しにされることもあるそうだから。

それに、あそこの職員は、冷淡だったけど、乱暴ではなかった。

ひもじい思いをすることはあっても、暴力を振るわれることはなかった。

それだけでも、恵まれた環境だったのかもしれない。

でも、私は満たされなかった。

私は飢えていた。

純粋に、食べ物が不足していたせいでもあるが。

それ以上に、心が飢えていた。

人の温もりに飢えていた。

私には、何もなかった。

親も、友人も。

心を満たしてくれるものを、常に欲していた。

そして、それが私のもとに舞い降りた。
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