The previous night of the world revolution5~R.D.~
そうまでしたのに。

「ルチカ様、教祖様!」

「…何事です」

血相を変えた信者の一人が、慌ただしく私のもとに駆け寄ってきた。

「て、帝国騎士団が…!帝国騎士団が、突入してきて…!」

「…知っています」

この騒々しい喧騒を聞けば、嫌でも分かる。

「お逃げください、ルチカ様。あなた様さえいれば、『天の光教』は再起を…」

「私は逃げません」

「!?」

何故、私が逃げなくてはならないのか。

私はここにいる。

「私は正しいことしか言っていません。何も間違ってはいないのです」

間違っているのは、彼らの方。

神の信徒である私達を迫害しようとする、不信仰者達だ。

正しい私が、何故背中を向けて逃げなくてはならないのだ。

「私には、疚しいことなど何もありません。だから逃げません。彼らがここにやって来て、私を捕らえると言うのなら、そうさせなさい」

「ルチカ様…」

「愚かな彼らは、いつか知ることになるでしょう。己の過ちを。そして悔いることになるでしょう」

そのときこそ、今度こそ。

私の望む、信仰に溢れた世界になるはず。

その為なら。

「…なら、あれを起動させて良いのだな」

部屋の壁にもたれて聞いていた『厭世の孤塔』のメンバーが、私にそう聞いた。

…そうだな。

「えぇ…。お願いします」

「…承知した」

彼はにやりと笑って、部屋を出ていった。

「る、ルチカ様…?あれ、とは…?」

「…」

『天の光教』の信者達には、何も話していない。

これは、私と『厭世の孤塔』との密約。

いざというときは…。

…私達は、神の御元に向かおう。

それが、神に愛された者の向かう先。

恐れることなどない。

私達は、神の腕に抱かれに行くのだ。

そして同時に、神の愛を信じない不信仰者達は、神の御元で魂を洗われ。

今度こそ、神の敬虔なる信徒として生まれ変わる。

私達の殉死によって、心ない人々の心に少しでも神の愛が届くのなら、私の命など惜しくはない。

だから、私は『厭世の孤塔』の人々に頼んだ。

もし帝国騎士団がここに突入してきたら、あなた達はすぐに脱出して。

そして、中にいる信者と、帝国騎士団と、私を含めて…建物ごと、爆破して欲しいと。

さぁ、見るが良い。人々よ。

これが、神を信じる者の覚悟だ。



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