The previous night of the world revolution5~R.D.~
『厭世の孤塔』構成員の大半が、俺の鎌(or双剣)の錆に消えるか、

ルルシーの弾丸に消えたか、アリューシャの狙撃に消えたか、

あるいはルリシヤの『ブートジョロキア・カラーボール』の犠牲となり。

掃討戦は、無事に完了した。

数匹の獲物は逃がしたが、これで良しとせねばなるまい。

「ふぅ…。任務完了ですね」

「あぁ…」

すっかり血塗れ、脂肪塗れになった双剣を振るって、汚れを払う。

さすがに、ちょっと疲れた。

死神モードのときは、疲れなんて全く感じないんだけどね。

今回は特に死神モードじゃなかったから。

それより。

「シュノさん、大丈夫ですか?」

被弾した彼女の方が心配だ。

「うん、平気よ」

シュノさんは気丈に答えたが、黒いゴスロリブラウスの袖が、血でどす黒く染まっていた。

袖口から、ぽたぽたと血が垂れている。

俺は、自分のコートの裾を引きちぎった。

「え、あ、ルレイア」

「簡単ではありますが、止血しましょう」

コートの布切れをシュノさんの腕に巻き、きつく締める。

これでも、元帝国騎士でな。

医療の心得も多少は。

「あ、ありがとう。ルレイア…」

「いえ…。こちらこそ済みません、前衛で捌ききれずに…」

前衛で処理しきれなかった敵兵を、中衛にいるシュノさんに過剰に押し付けてしまった。

反省点である。

「ううん…。私が油断したのよ。ごめんなさい、皆…。私が怪我しなければ、追撃も出来たかもしれないのに…」

敵を数匹逃がしてしまったのは、自分の責任だと思っているらしく。

シュノさんは、申し訳なさそうに謝罪した。

まさか。

「とんでもない、関係ありませんよ。敵の練度を考えれば、追撃を諦めたのは賢明です」

あの状況で、もし俺とルルシーが深追いしてしまったら。

前衛と中・後衛とが大きく引き離され、陣形が崩れかねなかった。

「そうだ、シュノは悪くない。俺達がシュノに敵を回してしまったから…」

「それを言うなら、合流が遅れた俺のせいでもあるな。もう少し早く着いていれば、シュノ先輩一人に中衛を押し付けずに済んだ」

「ってかむしろ、アリューシャのせいじゃね?アリューシャがどーしても前線に出てきたいって我が儘言ったから!シュー公に気ぃ遣わせちまった!ごめんよシュー公!」

皆それぞれが、責任を自分のものにしようとしていると。

インカムから声がした。

『はいはい、悪いけど君達。戦場で起きたことは、全て作戦指揮官である私の責任だからね。そこは履き違えないように』

…アイズ。

彼らしいと言えばらしいけど…。

「…アイズ。上の…帝国騎士団は?『天の光教』は、どうなりました?」

こちらには、まだ何も音沙汰なし。

オルタンスの奴らは、ちゃんと役目を果たしたんだろうな?

『ついさっき、連絡が入ったよ。無事、ルチカ・ブランシェットを確保したそうだ』

「…そうですか」

それは何より。

あの女が、どんなゲロ顔を晒していたのか…。

見られなかったのが残念だ。

まぁ、オルタンス達が役目を果たしたのなら、それで良い。

『撤退しよう。じきに警察やテレビ局が来る。それまでに…夜が明ける前に、私達は消えなくては』

「…了解です」

そうだね。

夜が明ければ、そこはもう、俺達の住む世界ではない。

俺達は、俺達のいるべき闇に帰ろう。

…なぁ、これで分かったろう?ルチカ・ブランシェット。
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