The previous night of the world revolution5~R.D.~
『天の光教』は、教祖ルチカ・ブランシェットの逮捕により、正式に宗教団体としての権利をなくした。

事実上の解散である。

行き場をなくした信者達は、それぞれ無宗教者に戻るか。

アメリア教に吸収されるか。

あるいは、まだ諦めきれない者は、第二第三の『天の光教』を自分達で作り出し、そこで活動しているらしい。

勿論、『天の光教』のように暴徒化しないよう、そこは帝国騎士団がしっかり監視しているようだ。

宗教活動そのものを、禁止する訳にはいかないからな。仕方ない。

で、ルチカ・ブランシェットがどうなったかと言うと。

後で聞けば、あいつ、自分ごと建物を爆破して、心中するつもりだったそうじゃないか。

そして、それを阻止したのがルリシヤだとか。

こんな話を聞いてしまえば、最早今回のMVPは、ルリシヤに譲るしかない。

またか。

シェルドニアの一件でもMVPを取られたのに。

俺は時代の主人公として、どうしたら良いんだ。

これは俺としても深刻な問題であるが、それ以上に深刻なのが、ルチカ・ブランシェットの処遇。

宗教団体の教祖をどうするかってのは、なかなか難題である。

『天の光教』は世間を掻き乱し、怪我人はおろか、死者まで出している訳で。

手のひら返しが大好きな大衆や、奴らのせいで外国に亡命させられていた一部の貴族達は、「あんな奴、死刑が妥当だ」と主張しているが。

別に悪意があってやった訳じゃないし。

あいつらはあくまで、宗教活動の一環のつもりだし。

それに、直接手を下したのは、ルチカ・ブランシェットではない。

何より、教祖であるルチカを殺せば、あの女は自分が望んでいた通り。

ルチカ・ブランシェットは、殉教者になってしまう。

今もなお、『天の光教』を諦めきれずに、第二第三の『天の光教』を創設した信者の残党達にとっては、ルチカ・ブランシェットを神格化する、絶好の機会。

ようやく収まりかけた火種に、ガソリン撒き散らすようなもんだ。

ルチカを逮捕されて、そうでなくても虫の居所が悪いに決まってる残党信者達。

ますます、過激な活動になりかねない。

とにかく事が沈静化され、世間が『天の光教』を忘れるまでの間は、ルチカ・ブランシェットに余計な手出しをするべきではない。

帝国騎士団もそのように判断したらしく。

今は、判決を下すのは先延ばしにするらしい。

ルチカ・ブランシェットには悪いが、しばらくあの女は放置である。

で、『青薔薇連合会』の方は。
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