The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…よし」
俺は、自宅のマンションの前に立って、自分の姿を今一度確認した。
今度こそは、大丈夫だ。
ルルシーさんの派閥の準幹部である俺は、当然今回の作戦にも参加している。
主には、雑兵狩りだったのだが。
俺は今回の任務のことを、妻であるフューニャには、内緒にしていた。
「実は俺、今度、『厭世の孤塔』っていう危ないマフィアと抗争するんだー」なんて、フューニャに言ってみろ。
心配かけるに決まってる。
思い出す。
先日、小さな組織との小競合いに駆り出されたとき。
うっかりフューニャに漏らしてしまったが最後、彼女はいきなり密室にこもり始め。
出てきたかと思ったら、赤い糸で首をぐるぐる巻きにされ、腹にどす黒い何かを詰め込み、そこに五寸釘を突き刺した人形を渡された。
誰を呪うんだと思ったら、「お守りなので、これを首からさげていなさい」と言われた。
本業占い師であるフューニャにそう言われると、なんだかこれを身に付けないと、悪いことが起きるのではないかと不安になり。
言われた通り首からさげて行ったら、部下にドン引きされた。
幸い抗争では、俺も部下も無傷で、あっさりと鎮圧出来たのだが。
多分、俺が首からさげてる人形が不気味過ぎて、敵も俺達の部隊には近寄りたくなかったのではないかと思われる。
結果としては効いたということで。
そんな事情があったので、今回の抗争については、俺は何も言わずに家を出た。
あんなチンピラ集団を討伐に行くだけでも、あれほど心配されたのに。
『厭世の孤塔』なんて危険なマフィアを倒しに行くと言ったら、今度は何をお守りに持たされるか、分かったものではない。
そう思って、俺はただ、「仕事が立て込むから、三日くらい帰れない」とだけ伝えた。
フューニャはこてんと首を傾げ、「あら、そうなんですか。何処かに出張でも?」と尋ねた。
「うん、ちょっとアシスファルト支部に用があって、お使いみたいなもんだよ」と誤魔化した。
本当は出張なんて真っ赤な嘘なのだが、余計な心配をかけるよりは良い。
三日も留守にすると言ったので、フューニャは不満そうであったが。
そこは、俺もしっかりご機嫌取りを考えてある。
美味しいと評判の、貴族様御用達の高級スイーツショップで、ケーキを買ってきた。
最近まで、『天の光教』騒動のせいで営業中止していたが、ようやく営業再開したばかりである。
三日ぶりに帰るのだから、これくらいは必要だ。
それに、明日はお休みをもらってきた。
大きな抗争の後なので、準幹部は全員、一日休みをくれるそうだ。
勿論、ケーキだけでは済ませない。
明日はフューニャと共に、デートに行こうと思う。
何処に行こうか。
たまには学生デート気分で、カラオケにでも行ってみようか?
きっと喜んでくれるに違いない。
「…よしっ」
俺はフューニャの喜ぶ顔を想像しながら、意気揚々と帰宅した。
「ただいま!」
いつもなら、俺の帰宅を聞き付けたフューニャが、てこてこと玄関に駆けつけてくる…。
…はずだった。
俺は、自宅のマンションの前に立って、自分の姿を今一度確認した。
今度こそは、大丈夫だ。
ルルシーさんの派閥の準幹部である俺は、当然今回の作戦にも参加している。
主には、雑兵狩りだったのだが。
俺は今回の任務のことを、妻であるフューニャには、内緒にしていた。
「実は俺、今度、『厭世の孤塔』っていう危ないマフィアと抗争するんだー」なんて、フューニャに言ってみろ。
心配かけるに決まってる。
思い出す。
先日、小さな組織との小競合いに駆り出されたとき。
うっかりフューニャに漏らしてしまったが最後、彼女はいきなり密室にこもり始め。
出てきたかと思ったら、赤い糸で首をぐるぐる巻きにされ、腹にどす黒い何かを詰め込み、そこに五寸釘を突き刺した人形を渡された。
誰を呪うんだと思ったら、「お守りなので、これを首からさげていなさい」と言われた。
本業占い師であるフューニャにそう言われると、なんだかこれを身に付けないと、悪いことが起きるのではないかと不安になり。
言われた通り首からさげて行ったら、部下にドン引きされた。
幸い抗争では、俺も部下も無傷で、あっさりと鎮圧出来たのだが。
多分、俺が首からさげてる人形が不気味過ぎて、敵も俺達の部隊には近寄りたくなかったのではないかと思われる。
結果としては効いたということで。
そんな事情があったので、今回の抗争については、俺は何も言わずに家を出た。
あんなチンピラ集団を討伐に行くだけでも、あれほど心配されたのに。
『厭世の孤塔』なんて危険なマフィアを倒しに行くと言ったら、今度は何をお守りに持たされるか、分かったものではない。
そう思って、俺はただ、「仕事が立て込むから、三日くらい帰れない」とだけ伝えた。
フューニャはこてんと首を傾げ、「あら、そうなんですか。何処かに出張でも?」と尋ねた。
「うん、ちょっとアシスファルト支部に用があって、お使いみたいなもんだよ」と誤魔化した。
本当は出張なんて真っ赤な嘘なのだが、余計な心配をかけるよりは良い。
三日も留守にすると言ったので、フューニャは不満そうであったが。
そこは、俺もしっかりご機嫌取りを考えてある。
美味しいと評判の、貴族様御用達の高級スイーツショップで、ケーキを買ってきた。
最近まで、『天の光教』騒動のせいで営業中止していたが、ようやく営業再開したばかりである。
三日ぶりに帰るのだから、これくらいは必要だ。
それに、明日はお休みをもらってきた。
大きな抗争の後なので、準幹部は全員、一日休みをくれるそうだ。
勿論、ケーキだけでは済ませない。
明日はフューニャと共に、デートに行こうと思う。
何処に行こうか。
たまには学生デート気分で、カラオケにでも行ってみようか?
きっと喜んでくれるに違いない。
「…よしっ」
俺はフューニャの喜ぶ顔を想像しながら、意気揚々と帰宅した。
「ただいま!」
いつもなら、俺の帰宅を聞き付けたフューニャが、てこてこと玄関に駆けつけてくる…。
…はずだった。