The previous night of the world revolution5~R.D.~
もう一人の姉、アルティシアは、特に咎められることもなく、無難に国を治めてはいるが。

だが、それだって基本的には、帝国騎士団の言いなりだ。

別に、帝国騎士団が王位を脅かしている訳ではない。

単に、姉のアルティシアは、気が弱いのだ。

前王であった姉ローゼリアは、自分の権力に物を言わせ、何にでも首を突っ込み、口を挟み、自分の思うようにしなければ気が済まない人だった。

国王という権力を、存分に利用する人だった。

でも、もう一人の姉アルティシアは違う。

彼女は昔から、気の弱い人だ。

しかも、好き勝手やって退位させられた姉ローゼリアを見ているから、余計に萎縮してしまう。

帝国騎士団長から何を提案されても、進言されても、「ならばそうしましょう」と何でも承認してしまう。

自分の意見というものを、ほとんど言うことがない。

ローゼリア女王の治世が良かったとは決して言わないが、言いなりになっているアルティシア女王を見ると、情けなくもなる。

今の帝国騎士団長が、欲のない人物であることに助けられていると思う。

僕も何度か会ったことがあるが、今の帝国騎士団長、オルタンスは、およそ出世欲というものからかけ離れた人物だ。

出世欲がなければ、野心もない。

ルティス帝国に、そしてベルガモット王家に、ただただ従順な人物だ。

そのお陰で、随分助けられている。

彼がもし野心家だったら、姉のアルティシアは、とっくに女王の座を追われていただろう。

それくらい、情けなくて、頼りない女王だ。

でも、僕だって人のことは言えない。

散々扱き下ろしておいて、と思われるかもしれないが。

これでも僕は、二人の姉のことを尊敬しているのだ。

だって姉達は、二人共王位についている。

王冠を被って、ルティス帝国の国王を名乗っている。

それだけでも、充分に凄いことだ。

僕には、とてもそんなことは出来そうにない。

国を背負って立つなんて、とんでもない。

僕は絶対にそんなことはしたくないし、国王になるなんてまっぴらだ。

皇太子というだけで、こんなにも不自由で仕方ないのに。

挙げ句国王になるなんて。

僕は、自由に生きたい。

権力なんて要らない。

閉じられた世界の、外を知りたい。

でもレスリーは、それを贅沢だと言う。

確かに贅沢なのだろう。

それでも、僕は知りたいのだ。

この国の、この世界の、綺麗なものも醜いものも、全部この目で見たい。

光も闇も、全部知りたい。

どうしても僕は、この閉じられた世界の、外に出たいのだ。
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