The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…強かったね、彼」

「…あぁ」

ルリシヤを最初に見たときも、同じことを考えたよ。

「まさか、ルリシヤと真っ当に渡り合うなんて…。ルレイア以外に、そんな人物がいるとは思わなかったよ」

「…」

それも、俺達は途中から、多対一に持ち込んだのだ。

アリューシャの狙撃で気を逸らせたから、その隙にルリシヤがスタンガンをぶつけたが。

あれがなかったら、今頃どうなっていたか。

「あいつ、アリューシャの狙撃を防ぎやがった!あの!でっかい剣で!バチンって弾いたんだぞ!ムカつくー!」

狙撃を防がれたことに、相変わらず苛立っているアリューシャ。

「でも、そのお陰でルリシヤが勝てたんだよ?アリューシャ」

「でもでもでも!アリューシャの狙撃を!あいつ!アリューシャは狙った的を外さないのに~!」

スナイパーとしての矜持を、傷つけられたらしい。

いや、何度も言うが、お前の腕が悪かった訳じゃないからな。

あいつの反射神経がおかしいだけだから。

外した訳じゃなくて、当てたけど防がれただけ。

「それで、アシュトーリアさん」

「なぁに?」

「このこと…ルレイアに、伝えて良いですよね?」

アイズは、アシュトーリアさんにそう言った。

…ルレイアに…。

「…そうね。伝えなくてはならないでしょうね」

「待ってください…!」

俺は、口を挟まずにはいられなかった。

「もしあの男が、ルレイアの帝国騎士時代の知り合いだとしたら…ルレイアは…」

きっと傷つくだろう。嫌でも思い出してしまうだろう。

過去からの亡霊を。

またあの、辛かった時期のことを思い出す。

忠誠を尽くしていた組織に、裏切られたときの苦しみも。絶望も。

それを思い出したとき、ルレイアはどんなに苦しい思いをするだろう?

想像しただけで、発狂してしまいそうだった。

「ルルシー…。気持ちは分かる。でも、彼はまた来ると言ったんだよ?隠しても、いずれバレる」

「…」

「彼の目的はルレイアに会うことなんだ。ルレイアに会うまでは、きっと納得しないよ」

…そうかもしれない。

「だけど…せめて…。なら、そのときまでは黙って…」

「それは無理だよ、ルルシー」

「何でだ!」

「君、ルレイア相手に隠し事、出来る?」

うっ…。

「ここにいる全員、帰ってきたルレイアに、何も悟らせず、気づかせず、白々しくいつも通り接する自信がある?それだったら、隠しておいても良いと思うけど」

…思い出す。あのルレイアの洞察力。

一番最初にギブアップしたのは、シュノだった。

「…ごめんなさい…。私、多分無理…」

シュノ、お前は素直な良い奴だ。

そして。

「アリューシャも無理だわ…」

そうだな、アリューシャ。

お前、何でも顔に出るもんな。

「そうねぇ。ルレイアの洞察力は凄いものね。私も隠しきれる自信がないわ」

アシュトーリアさんでさえ、この返事。

しかし。

「俺は隠しきってみせるぞ。この仮面の下に」

「…」

そんなことが出来るのは、お前くらいだよ、ルリシヤ。

「正直、私も自信がない」

アイズもこの返事。

…だよな。

アイズもアシュトーリアさんも無理だって言うのに、一番ルレイアの傍にいる俺が、隠しきれるはずがない。

俺達が貝のように黙っていたとしても、あいつは帰ってくるなり、「何かあった」ことに気づくだろう。

ルレイアを騙しきれるほど、完璧な演技が出来るとは思えない。

「…出来れば隠しておきたいけど…仕方ないね」

「…あぁ…」

隠しておくことは出来ない。

気は進まないが、ルレイアにも伝えるしかないだろう。
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