The previous night of the world revolution5~R.D.~

sideルレイア

──────…本部に帰ってきたときから、あぁ、何かあったなと思っていた。

本部内の空気が、いつもより遥かに殺伐としていたから。

そして、ルルシー達の顔を見て分かった。

アイズとルリシヤは、上手く隠していたけれど。

残念ながら他の三人は、一目見ただけで、「何かあった」顔をしていた。

自分でも嫌なんだよ。こういう体質。

知らない方が良いことなんて、世の中死ぬほどあるからな。

で、ルリシヤに怪我を負わせたという、狐のお面の両剣使い。

一体何者なのか。

「知り合いに…両剣使いは、いませんね」

少し考えてそう答えると、ルルシーは明らかに、ホッとしたような顔をしていた。

ルルシーのことだから、きっとめちゃくちゃ俺のことを心配していたんだろうな。

帝国騎士時代の知り合いでも来たのではないかと。

確かに、帝国騎士団の隊長だったときは、人種、国籍を問わず、毎日のように誰かしらと会っていた。

俺のことをまだ覚えている人間がいても、おかしくはない。

成程、ルルシーが隠そうとする訳だ。

あの頃の記憶を彷彿とさせる人物に会えば、俺がまた傷つくのではないかと…そう心配してくれたんだろう。

全く、ルルシーったら心配性なんだから。

「その…あの、帝国騎士官学校時代の知り合い…とかでも、なさそう…?」

シュノさんが、おずおずと尋ねた。

物凄く気を遣ってもらってるみたいだ。

「シュノ!それは…」

慌ててルルシーが止めようとしたが。

「大丈夫ですよ」

俺は苦笑した。そこまで心配されているとは。

「ご、ごめんなさい。私…」

「良いんですよ、シュノさん。気を遣わせて済みません」

俺にとって、あちら側にいた頃のことは、例えるなら、大きなカサブタみたいなものだ。

思い出すだけで、傷口が開いて、血が滲み出るような記憶。

だからこそ、皆それを思い出させないようにしてくれてる。

その気遣いが有り難かった。

でも。

「思い出せる限り、両剣使いの知り合いはいませんね。学校時代も、帝国騎士時代も」

そもそもあの学校は、普通の剣だけで戦うのが美徳とされていた。

鎌だの薙刀だの両剣だの、そういう武器は邪道だった。

そんな中で、両剣なんて珍しい武器を持っている人間がいたら、必ず記憶に残っているはずだ。

覚えてないってことは、多分、会ったことはないのだろう。

当時は使ってなかっただけで、最近使い始めた、って可能性はあるし。

顔も名前も分からないんじゃ、判断の使用がない。

一体、誰が俺を訪ねてきたのやら…。
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