The previous night of the world revolution5~R.D.~
「ルレイアさん。来ました」

華弦が、ルルシーの執務室にやって来て、簡潔にそう告げた。

何が、と聞く必要はない。

ここ数日、俺達はずっと、その人物を待っていたのだから。

ようやくかと思ったくらいだ。

「そうですか。一人で?」

「えぇ、一人です。以前のような武器も持っていません」

本当に丸腰で来たのか。

「身体検査は?」

「応じました。顔のお面だけは外さないで欲しいということでしたが…」

あくまで顔は隠したいって?

まぁしょうがないか。

「またあのお面か…。ひっぺがしてやれ」

いやんルルシー。過激派。

「お面は外しちゃ駄目ですよ、ルルシー」

「あぁ。仮面は大事だからな。もう顔面の皮膚と同じだ」

「…お前らな…」

お怒りのルルシーだが。

わざわざ顔を隠すということは、それなりの理由があるだろうから。

それは外さない方が良い。

必要があれば、向こうから外すだろ。

「武器を持ってないなら、良いでしょ。応接室に通して」

アイズが、そう指示した。

さすがアイズ。分かってる。

「本当に良いのか…?」

「会ってみないことには、彼の正体も目的も分からないからね」

「アリューシャは、狙撃の用意とかしなくて良いの?」

「しなくて良いよ。ここは私達の巣穴だから」

いざとなったら、袋叩きだ。

向こうが丸腰だってんなら、余計にな。

今回は、こちらも充分に迎え撃つ準備をしてある。

『青薔薇連合会』が、たった一人の来客の為に、厳戒態勢で迎え入れるとは。

まるでルリシヤのときじゃないか?

まぁ、あのとき俺、病院にいたから、見てないんだけど?

「一体誰が会いに来てくれたんでしょうねぇ」

「…ルレイア…」

「楽しみですね」

昔の友人に会うような気分だ。

昔の友人…いないけど。

思えば俺、ルルシーが初めての友達なんだよなぁ。

昔は陰キャだった。

でも、今は楽しみな気分である。

それなのに、ルルシーは。

「…ルレイア、無理するなよ」

「分かってますって…」

何回言うの、ルルシー。それ。

更に、シュノさん達も。

「大丈夫よ。何かあったら、私がルレイアを守るわ」

「アリューシャが!今度こそ!すこーんと撃ち抜いてやるからな!すっこーん!と」

「心配するな。今回はスタンガンの電圧を高くして、ナイフの強度も増してきた。試験開発中の『キャロライナリーパー・カラーボール』もある。無敵だ」

それは頼もしい。

「いや、ルリシヤ…。使うのは良いが、そのキャロライナリーパー…俺達にも被害が及ぶだろ」

「勿論及ぶ。使用時にはガスマスク必須だ」

「使い物にならないじゃねぇか!」

敵味方問わず、甚大な被害を呼びそうな武器だ。

でも、こんないつものやり取りのお陰で、気分が楽になる。

「じゃ、会いましょうか」

蛇が出るか狐が出るか。

はたまた…。
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